単三電池4個から5V電源を得て設計を簡素化するインバータ回路

要約

この設計ノートは、単三電池4個から5Vを得る回路について説明します。トランスによって、反転スイッチングレギュレータのMAX739は-5Vを発生することができます。-5Vがより高負荷の電流を供給する場合は異なる接続が推奨されます。

単三電池4個を直列に接続すると(ポータブル機器の一般的な電源)、約6V (電池が新しい時)から約4V (放電時)まで下がるバッテリ電圧を発生します。5Vレギュレータでは、このような上下のバリエーションにより回路設計が複雑化します。

ステップアップ(ブースト)コンバータの後ろにリニアレギュレータを接続した場合と同様に、フライバックトランス回路の場合も、6V~4Vの入力を安定化した5Vに変換することができます。(±5V仕様では、いずれかの回路とチャージポンプを選択することができます。) 装置が完全にポータブル型で、バッテリ電圧がフローティング状態になる場合は、より単純なインバータ回路で容易に5Vまたは±5Vレイルを発生させることができます。また、インバータの単一スイッチング周波数は、フィルタリングを容易にするだけでなく、ビート周波数の発生を防ぐこともできます。

インバータ回路は、トランスを通常のインダクタ用の2つの整合巻線で置換えます(図1a)。この回路ではIC1の内部スイッチがオフになると、VOUTとダイオードドロップの和が各巻線上に印加されます。この図に示すように、適切なリファレンス接続を適用することで、二次巻線(右側)は電源電圧を追加発生(この場合は-5V)することができます。

VOUT (ピン8)は、フィードバック接続になっています。安定性を得るために、安定化出力(この場合は5V)は、より大きな負荷を持たせることが必要です。殆どのシステムの負電源電圧はバイアス電源のみとなっているため、これは実現されています。しかし、より大きな負荷電流を-5V出力から得る必要のあるシステムでは、図1bに示すように、二次巻線を再接続して5V出力を発生させます。

図1. 1:1トランスを用いることで、この反転スイッチングレギュレータから-5Vを発生させることができます(a)。-5V電源の負荷電流が大きい時は、右側コイルの接続を変えることが推奨されます(b)。

図1. 1:1トランスを用いることで、この反転スイッチングレギュレータから-5Vを発生させることができます(a)。-5V電源の負荷電流が大きい時は、右側コイルの接続を変えることが推奨されます(b)。

最適なカップリングを得るためには、トランスは平行に配置したバイファイラ巻線を必要としますが、Coiltronics CTX20-4などの市販(非バイファイラ)のトランスでも良好な特性を得ることができます(表1)。この時、V-の値(公称-5V)は、負荷電流とトランスの巻数比(必ずしも1:1とは限りません)に依存します。例えば、負荷がV-で5mA~50mA、5Vで50mAの時は、V-の変化は300mV以下となり、チャージポンプよりも低い値になります。無負荷時のV-は、D2をオンにした時に発生するリンギングの整流によって増大します。

表1. 図1b のVOUT (V+およびV-)とVINおよびRLOADの関係
Input voltage (V) Input current (mA) V+ load (Ω) V+ (V) V- load (Ω) V- (V) Efficiency (%)
6 1.68 None 5.07 None 6.55
6 62 100 5.08 None 10 69.37
6 68 100 5.08 1000 5.68 71.16
6 124 100 5.08 100 5.41 74.02
5 1.8 None 5.08 None 6.48
5 74.5 100 5.08 None 10 69.28
5 82.5 100 5.08 1000 5.69 70.41
5 151 100 5.08 100 5.42 73.09
4 1.8 None 5.1 None 7
4 95 100 5.1 None 10 68.45
4 105 100 5.1 1000 5.71 69.69
4 196 100 5.1 100 5.3 68.31
注:負荷が1,000Ωの時は出力で5mAが得られ、
100Ωの時は50mAが得られます。