ピンエレクトロニクスのMAX9979の較正方法
要約
ピンエレクトロニクスデバイスのMAX9979は28のDACを集積化し、それらの利得とオフセット誤差は較正可能です。較正はMAX9979の較正レジスタを使用して行われます。この較正によって高度にリニアで正確なドライバ/PMU/コンパレータ/アクティブ負荷が得られ、それは試験機器産業の最も厳しい要求に応えます。
はじめに
MAX9979は高度にリニアなデュアルの1.1Gbpsのピンエレクトロニクスで、PMUとレベル設定用のディジタル-アナログコンバータ(DAC)を備えています。このデバイスには合計で28の16ビットDAC (チャネル当り14)が集積化されています。デバイスの較正レジスタを使用すると、これらのDACの各供給レベルは利得とオフセット誤差を個別に調整可能です。これらのレジスタによってMAX9979のレベルは-1.5V~+6.5Vの全動作範囲で5mVよりも精度良く較正することができます。このアプリケーションノートはこの較正を行う方法を説明します。
バッファの利得とオフセット誤差
MAX9979内部には多数のユニティゲインバッファがあります。これらのバッファには、補正されなければ、オフセットおよび利得誤差があります。図1はこれらのバッファの1つがMAX9979内部でどのように見えるかを示しています。
図1. MAX9979のレベル設定方式
内部の16ビットDAC出力は、ユニティゲインバッファのオフセットおよび利得誤差を補正するオフセットおよび利得補正セルの入力を駆動します。MAX9979の全動作範囲で、高い精度、線形性、低オフセットレベルを生成するのはこの方式です。creates high precision, linear, low-offset levels over the MAX9979's entire operating range.
MAX9979のデータシートはオフセットおよび利得較正レジスタ、および内蔵のシリアルインタフェースを使用してこれらのレジスタにアドレスしてプログラムする方法について説明しています。以下の項はMAX9979EVKITを使用して較正を実行する方法を示しています。MAX9979のEV (評価)キットは視覚的および実際の結果の両方を提供します(図2)。
MAX9979EVKITを使用するMAX9979の較正
図2. MAX9979EVKIT
上に示すようにEVキットは、マキシムのウェブサイトからダウンロード可能なグラフィックスユーザインタフェース(GUI)によって制御されます。
MAX9979EVKIT基板の設定
- EVキットマニュアルの指示に従ってEVキット基板をパワーアップします。
- DATA0ピンを0.8Vに接続します。
- DATA0/ピンを0Vに接続します。
- RCV0ピンを0Vに接続します。
- RCV0/ピンを0.8Vに接続します。
- 高精度のDVMをDUT0ピンに接続します。
- GUIソフトウェアをロードします。
図3. 開始時のMAX9979のGUI
DriveHi CH1/CH0 quickstartをクリックします。DUT0ピンに接続したDVMの測定値が3Vであることを確認します。
VDH0の較正手順
- オフセット調整
オフセットの調整は必ず利得より先に行います。- VDH0の電圧セルをクリックして1.5Vにリセットします。このことによってDUT0出力は+1.5Vに設定され、これは-1.5V < VDH0 < +6.5Vの動作範囲の中間点になります。VDL0を-2.0Vに設定して、VDH0がVDL0に近づくにつれてVDH0とVDL0の間には最低0.5Vの差があることを確認します。
- DVMを使用してDUTの電圧を監視します。これは1.5Vとはならず、1.5Vからオフセットします。
- DUTの測定電圧が1.5Vの設定された電圧に近づくまで、VDH0のオフセットスライダをいずれかの方向に調整します。これが行われると、MAX9979の内蔵のVDH0用の較正レジスタにオフセット補正電圧を設定したことになります。さらにオフセットスライダを動かして調整する必要はありません。
- 利得調整
VDH0の利得調整を較正するためには多くの場所があります。VDH0を-1.5Vに設定して利得スライダを調整し、その後VDH0を+6.5Vに設定し、測定電圧をチェックすることができます。しかし、範囲の両端では非線型性が存在します。最大の非線型性はVDH0がVDL0に近づく場合です。より良い方法は必ずデバイスの最も線形の領域で動作させることです。この場合は、VDH0の設定の±1.5Vの範囲で動作させることです。
- VDL0を-2Vに設定します。上のオフセット調整ステップで先に設定したオフセット較正を保持します。
- VDH0を0Vに設定します(最初の設定値から必ず-1.5V離します)。
- DUTの測定値を確認します。DUT出力が可能な限り0Vに近づくように利得スライダを調整します(オフセットスライダは動きに任せます)。
- VDH0を3V (最初の設定値よりも+1.5V大きい)に設定してDUTの電圧を確認します。
- 今度は、測定値は3.000Vに非常に近くなるはずです。回転の中心は+1.5Vになり、利得はこの回転中心の周りの±1.5Vに調整されました。VDH = 3Vにおける測定値が所望の値より、大きい誤差(このポイントでは2mV以下でなければなりません)であった場合、0Vと3Vで対称的な誤差となるようにステップ2~5を繰り返します。
- これを終えたら、VDH0を-1.5V~+6.5Vにスイープします。設定された電圧と測定された電圧の間の誤差をプロットします。
図4. 較正後のVDH0のオフセットと利得レジスタの設定
較正の前と後でのVDHの誤差スイープ
図5の注意点は以下のとおりです。
- 較正手順の前のオフセットは以下のとおりです。
- -1.5V = -27mV
- +1.5V = +5mV
- +6.5V = +54mV
- 較正手順の後のオフセットは以下のとおりです。
- -1.5V = -3mV
- +1.5V = -0.1mV
- +6.5V = +0.1mV
この手順はすべてのレベルに対して、両方のチャネルに繰り返されます。コンパレータのオフセットを較正するためには、コンパレータ出力を監視して、スイッチングポイントを探すか、または外部部品でサーボループ内にコンパレータを置く必要があります。
図5. 較正の前と後でのDUT0ピンにおける測定されたDVH (typ)誤差
較正レジスタの設定値の保存
すべてのレジスタの較正を終えた後は、GUIインタフェースは図6のように見えます。この場合すべてのオフセットおよび利得レジスタはその較正値に設定されています。較正済みのVDH0以外のレベルに対するDAC値は、仮定の値であり、これらの数値は各デバイスの較正に従って更新されます。
ここに表示されているのはCH0のページのみであり、CH0 PMU設定およびCH1ドライバ、およびPMU設定に対するGUI設定の中に他の3ページがあります。全較正が終わると、すべてのGUIページにすべてのオフセットおよび利得DAC設定値が表示されます。
これらの設定値はMAX9979がパワーアップされている間にのみ保持されます。MAX9979がパワーダウンして再びパワーアップする場合、これらの較正済みのレジスタのすべての設定値は失われます。そして、起動のデフォルト値が現れます。
この場合は、これらのレジスタはシリアルインタフェースからの設定によって更新されました。エンドユーザーはシリアルインタフェースを使用してパワーアップシーケンスの後にこれらの較正定数をMAX9979に設定することも必要です。したがって、各パワーアップで、表の中のこれらの定数を格納してこの表をMAX9979のレジスタに読み戻すことが重要です。
EVキットはこれらの定数を保存ファイルに格納することができます。ユーザーは単純に「File」のプルダウンメニューをクリックし、「Save」をクリックし、ファイルに名前を付け、その後、このファイルを格納する場所を定めます。そうすると、パワーアップの後は、「File」をクリックして、「Load」オプションをクリックすることができます。場所を探索して保存した較正ファイルをロードすると、MAX9979は完全に較正済みとなり、使用可能状態です。
「File」プルダウンメニューの中の「Save」および「Load」オプションはどのような設定をも格納するために使用可能で、その中には較正定数も含まれています。この能力を使用して設定を順次アップロードすると、MAX9979の特性評価が容易になります。
図6. 較正後の標準的なオフセットの利得の設定値
まとめ
内部の各16ビットDACを使用して、DACごとにオフセットと利得を調整することによってMAX9979のレベルを較正することができます。較正によって高度にリニアで正確なドライバ/PMU/コンパレータ/アクティブ負荷が得られ、それは試験器産業の最も厳しい要求に応えます。この能力のすべてがピンエレクトロニクスデバイスのMAX9979に内蔵されています。
ここで説明した方法を使用して、MAX9979のデータシートをレビューすることによって、このデバイスの機能のすべてを試験し、特性評価し、そして利用することができます。