プログラマブルな補償機能を備えた高効率、高密度のPSM μModuleレギュレータ

FPGAボードやプロトタイプ、テスト、測定などのアプリケーションには、汎用性の高い高密度の電源ソリューションが必要です。LTM4678は25Aデュアル出力または50Aシングル出力のμModule®レギュレータで、16mm×16mmの小型パッケージにデジタル・パワー・システム・マネージメント機能(PSM)を内蔵しており、以下の特長を備えています。

  • デジタル・インターフェースを使用したデジタル調整が可能なデュアル・アナログ・ループによる制御と監視
  • 広い入力電圧範囲:4.5V~16V
  • 広い出力電圧範囲:0.5V~3.3V
  • 温度変化に対する最大DC出力誤差:±0.5%
  • 電流リードバック精度:±5%
  • 1mΩ以下のDCR電流検出
  • 統合化された入力電流検出アンプ
  • 400kHz、PMBus準拠のI2Cシリアル・インターフェース
  • 最大125Hzのテレメトリ・ポーリング・レート
  • 16ビット・シグマ・デルタ(Σ-Δ)ADC内蔵
  • 固定周波数電流モード制御
  • バランスの取れた電流分担による並列動作
  • 16mm × 16mm × 5.86mm CoP-BGA

I2CベースのPMBUSインターフェースとプログラマブル・ループ補償

LTM4678は、アナログ・デバイセズのパワー・システム・マネージメント(PSM)μModuleファミリに属するデバイスで、PMBus/SMBus/I2Cデジタル・インターフェースを通じて設定とモニタリングを行うことができます。PCベースのLTpowerPlay®ツールは、電源電圧、電流、使用電力、シーケンシング、マージニング、障害ログ・データを視覚的にモニタリングし、制御することを可能にします。LTM4678は、ループ補償変数(gmとRTH)をプログラムできる初のµModuleレギュレータで、PCBボードの作成や変更を繰り返す煩わしさがなく動的な性能チューニングが可能なため、設計時間を大幅に短縮できます。

熱性能を向上させた小型で高電力密度のCoP-BGAパッケージ

熱性能を向上させたCoP(Component on Package)BGAパッケージは、高出力のLTM4678をわずか16mm×16mmのPCBフットプリントに組み込むことを可能にしています。インダクタはパッケージ上面に実装されてヒートシンクとして使われるため、効率的な冷却が可能です。

電流モード制御による容易な電流増幅

LTM4678はピーク電流モード制御を使用しています。電流はサイクルごとにモニタされて制御されるので、相間で電流を均等に分担することができます。

その他のユニークな特長

  • デュアル・リモート出力検出機能が、大電流アプリケーションにおけるパターンの電圧低下を補償。
  • 温度変化に対する最大DC出力誤差が±0.5%で、レギュレーション・マージンに余裕がある。
  • 直接入力電流検出により入力電流と入力電力を正確に測定。
  • 出力電圧がレギュレーション範囲内の場合、専用のPGOODピンが下流側システムに信号を提供。
  • EXTVCCピンが高VIN条件下で最大限の効率を実現。

デュアル出力コンバータ(1V 25Aおよび1.8V 25A)

5.75V~16V入力、デュアル出力の代表的なソリューションを図1に示します。LTM4678の2つのチャンネルは180°の相対位相シフトで動作し、入力rms電流リップルを減らすと共にコンデンサを小型化します。

図1. I2Cシリアル制御およびモニタリング・インターフェースを使用した1Vおよび1.8V 25A出力。

図1. I2Cシリアル制御およびモニタリング・インターフェースを使用した1Vおよび1.8V 25A出力。

図2に示すように、強制連続電流モード(CCM)における総合的なソリューション効率は、1.0V/25Aで85.8%、1.8V/25Aで90.4%です。

図2. 2つの出力の効率

図2. 2つの出力の効率

VIN = 12V、VOUT0 = 1.0V/25A、VOUT1 = 1.8V/25A、200LFMで動作させた場合のLTM4678の熱性能を図3に示します。周囲温度が約24°Cのときのホットスポット(CH1のインダクタ)の温度上昇は63°Cです。

図3. デュアル出力コンバータの熱性能。

図3. デュアル出力コンバータの熱性能。

多相、シングル出力、大電流(12V~1V 250A)

LTM4678は、大電流ソリューション用の多相シングル出力コンバータとして構成できます。図4に、複数のLTM4678を接続するためのブロック図を示します。出力電流を増やすにはLTM4678を追加して、それぞれのVIN、VOUT、VOSNS+、VOSNS−、PGOOD、COMPa/b、RUN、FAULT、SYNC、GNDピンを互いに接続します。

図4. 多相動作のシンプルさを示すブロック図。

図4. 多相動作のシンプルさを示すブロック図。

5個のLTM4678(10相)を並列に接続したときの各相の電流を図5に示します。これら10個の相の最大電流差は0.75Aで(25A基準で3%)、バランスの取れた電流分担が実現されていることを示しています。

図5. 並列接続した5個のLTM4678デバイス(10相)による電流分担。

図5. 並列接続した5個のLTM4678デバイス(10相)による電流分担。

5個のLTM4678を並列に接続し、450LFMの冷却空気流を当てて220Aの出力を得た場合の熱画像を図6に示します。5個のµModuleレギュレータ間の最大温度差は10°Cです。8相ソリューションの全体の回路図を図7に示します。

図6. 多相コンバータの熱性能。

図6. 多相コンバータの熱性能。

図7. 4個のLTM4678を使用した8相動作により1V 200Aの出力を生成。

図7. 4個のLTM4678を使用した8相動作により1V 200Aの出力を生成。

まとめ

ソリューションで、16mm×16mmのフットプリントで高い効率と出力を実現します。LTM4678は小型で使いやすいため、FPGAボードのようなスペースに制約のある設計に最適です。電気通信システムやデータ通信システム、あるいは工業用アプリケーションやコンピュータ・システム・アプリケーションなどの大電流アプリケーションには、複数のLTM4678を並列に接続して、多相動作で使用することができます。

著者

Haihua-Zhou

Haihua Zhou

アナログ・デバイセズのシニア・アプリケーション・エンジニア。μModule降圧レギュレータICアプリケーションを担当。アナログ・デバイセズ入社前はInfineon/International RectifierにてGaNアプリケーション業務を担当。シンガポール国立大学で博士号を取得。

Jian-Li

Jian Li

2004年に中国の清華大学で制御理論と制御工学の修士号を、2009年に米国のバージニア工科大学でパワー・エレクトロニクスの博士号を取得。現在はアナログ・デバイセズでパワー製品のアプリケーション・エンジニアリング・マネージャとして業務に従事。9つの米国特許を持ち、これまでに20以上の原著論文や学会論文を発表。

Shuilin-Simon-Tian-Blue

Shuilin Tian

アナログ・デバイセズのμModule設計エンジニア。アプリケーション・エンジニアとしての経験も有する。2015年にバージニア工科大学で電気工学の博士号を取得し、これまで20以上の技術論文を発表。