SoCおよびマイクロプロセッサ・アプリケーション用の高効率20AモノリシックSilent Switcher 2レギュレータ
工業用およびオートモーティブ・システムに使われる先進のSoC(システム・オン・チップ)ソリューションのパワー・バジェットは上昇の一途をたどっています。SoCには世代が進むごとに消費電力の大きいデバイスが追加されており、データ処理速度も向上しています。これらのデバイスには信頼性の高い電源が必要で、これにはコア用の0.8V、DDR3およびLPDDR4用の1.2Vおよび1.1V、周辺部品および補助部品用の5V、3.3V、1.8Vが含まれます。また、高度なSoCソリューションには、従来のPWMコントローラやMOSFETが提供するよりも高い性能が求められます。このため、必要なソリューションは、よりコンパクトでありながら、より高い電流容量と効率を備える必要がありますが、更に重要なのは、優れたEMI性能が求められるということです。アナログ・デバイセズのPower by Linear™モノリシックSilent Switcher® 2降圧レギュレータは、先進的SoCに関するこれらのパワー・バジェット要求を満たしながら、サイズと熱に関する制約を解決します。
SoC用の20V入力20Aソリューション
LTC7150Sは、工業用電源およびオートモーティブ電源として従来製品よりも優れた性能を発揮し、高い効率、小さいフォーム・ファクタ、低EMIといった特長を備えています。内蔵の高性能MOSFETと温度管理機能により、ヒートシンクやエアフローなしで最大20Vの入力電圧から最大20Aの電流を高い信頼性で連続的に供給できるので、LTC7150Sは工業用、輸送用、オートモーティブ用アプリケーション向けのSoCソリューションや、FPGA、DSP、GPU、マイクロプロセッサに最適なデバイスとなっています。
LTC7150Sを1MHzのスイッチングで使用する、SoCおよびCPU電源用の1.2V/20A出力ソリューションを図1に示します。この回路は容易に変更可能で、LTC7150Sの広い入力範囲を生かし、3.3V、1.8V、1.1V、0.6Vなどの出力構成とすることも可能です。LTC7150Sは第1段目の5V電源として使用できる出力電力容量を備えており、その後段に様々な出力の第2段目のスイッチング・レギュレータやLDOレギュレータを複数接続することができます。
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図1. 降圧コンバータのブロック図と効率:12VIN、1.2VOUT、20A
優れたEMI性能を持つSilent Switcher 2
大電流時にEMI規則の要求を満たすには、ソリューションのサイズ、効率、信頼性、複雑さなどについての様々なトレードオフを含めて、設計および試験に関する複雑な課題を解決する必要があります。従来の手法では、MOSFETのスイッチング・エッジ・レートを遅くしたり、スイッチング周波数を下げたりすることによってEMIを制御します。これらの方法にはいずれも、効率の低下、最小オン時間/オフ時間の増加、ソリューション・サイズの増大といったトレードオフが伴います。複雑でかさばるEMIフィルタや金属製シールディングといった他の問題緩和策を採った場合、基板スペース、部品、アセンブリのコスト面で大きく不利となり、温度管理や試験も複雑化します。
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図2. VIN = 14V、VOUT = 1V、20A、fSW = 400kHz
アナログ・デバイセズ独自のSilent Switcher 2アーキテクチャは、ノイズの多いアンテナのサイズを最小に抑える内蔵のホット・ループ・コンデンサを介して、EMIを自動的に除去します。この機能を内蔵MOSFETと組み合わせると、スイッチング・エッジが非常に高速の場合であっても、スイッチング・ノードのリンギングと、それに伴ってホット・ループに蓄えられるエネルギーが大幅に減少します。その結果、ACスイッチング損失が最小限に抑えられる一方で、非常に優れたEMI性能が得られます。また、EMIを最小限に抑えて高い効率を実現するためにSilent Switcher 2技術を採用しているので、EMIフィルタ設計とレイアウトを大幅に簡素化することができ、ノイズに敏感な環境に最適です。LTC7150Sは、簡単なEMIフィルタを前段に置くだけで、CISPR 22/CISPR 32に定める伝導EMIと放射EMIのピーク制限値を満たすことができます。放射EMIのCISPR 22試験結果を図3に示します。
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図3. 図2の放射EMI性能
高周波数・高効率を省スペースで実現
内蔵MOSFET、内蔵のホット・ループ・デカップリング・コンデンサや補償回路などが、シンプルな回路とSilent Switcherアーキテクチャによってシステムの複雑化を防ぎ、最終的なソリューション・サイズを最小限に抑えます。
LTC7150Sは、高性能の電力変換機能によって、ヒートシンクやエアフローを追加することなく大電流を供給することができます。他の多くのソリューションと異なり、高周波数での動作時に低EMIと高効率を同時に実現し、受動部品の小型化を図ることが可能です。図4に2MHzのソリューションを示します。ここでは、FPGAやマイクロプロセッサ・ソリューションのアプリケーション向けの極めてロー・プロファイルのソリューションに、小型の72nHインダクタとセラミック・コンデンサを使用しています。
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図4. LTC7150Sの回路図と熱画像(熱画像はfSW = 2MHz、5V入力、0.85V/20A出力時のもの)
まとめ
工業環境やオートモーティブ環境における高いインテリジェント機能、自動化、検出機能に対する需要は、より高性能な電源を必要とする電子機器の急激な広がりをもたらしています。低EMIへの要求は、ソリューション・サイズ、効率、熱効率、堅牢性、使いやすさといった項目に、重要な電源条件が加わったことで、生じてきました。LTC7150Sは、Silent Switcher 2技術を採用することによって、EMIに関する厳しい要求をコンパクトなフットプリントで満たします。内蔵のMOSFETや温度管理機能が、3MHzという高い周波数で、最大20Vの入力範囲から最大20Aの電流を連続的かつ確実に供給することを可能にします。