DN-284: インテルのモバイルCPUへ40Aを供給する効率のよい小型2フェーズ電源

はじめに

ノートブック・コンピュータは以前にも増して電力を必要としています。そのため、CPUの必要とする電源電流が大きく増加しており、インテルの最新のモバイルCPUでは最大40Aを必要とするに至っています。このような大電流では、低電流レベルではそれほど問題ではなかった多くの設計上の問題が発生します。今日のノートブック用電源の設計担当者は、既にゆとりのないノートブック内の限られたスペースで、不可避の電力損失と熱ストレスをうまく管理し、さらに高効率を達成しなければなりません。LTC®3716 2フェーズ・コントローラは、小型パッケージ内に以下の重要な機能を備えており、これらの設計上の問題を解決します。

  • 負荷電流は2つのフェーズ間で均等に分担されており、PCBへの熱ストレスを低減します。
  • 逆相動作により、入力容量と出力容量の双方に対する要求条件が緩和され、全体の効率が改善されます。
  • MOSFETゲートドライバが内蔵されているので別のドライバICの必要性がなく、スペースがさらに節約されます。

LTC3716のVIDテーブルは、モバイルTualatinプロセッサとモバイルNorthwoodプロセッサ用の最新のインテルIMVP仕様に適合しています。

小さなインダクタ、簡単な熱管理

1フェーズの同期型降圧レギュレータは低電流CPU用電源には最も一般的なソリューションです。にもかかわらず、CPUの電流が20Aを超すと、この簡単なトポロジーは最適とは言えなくなります。インダクタはあまりにも大きくなり、過度の電力損失が生じ、ソリューション全体のコストが法外なものになります。

他方、LTC3716をベースにしたソリューションでは、実装面積が小さく、低プロフィールのインダクタが使えます。その高電流ゲートドライバは、それぞれ最大3個のSO-8 MOSFETをドライブすることができ、別のドライバICを不要にします。負荷電流を分担する2つのフェーズを使うので、LTC3716は1フェーズのソリューションで発生する電流密集の問題を緩和します。熱がもっと均一に分布するので、熱管理が簡単になります。LTC3716の逆相動作により、入力と出力の双方のリップル電流が減少するので、効率がさらに改善されます。

さらに、2フェーズ・ソリューションの過渡性能は1フェーズに比べて優れており、効率を犠牲にすることもありませんが、それは2つの効果によります。つまり、実効動作周波数は、どちらの位相であれ、その周波数の2倍であり、等価インダクタンスはどちらのインダクタであれ、その半分です。

全体として、2フェーズ動作では、1フェーズのデザインに比べて小型で低コストで、効率と信頼性の高い高電流電源が実現されます。

40AインテルIMVP-III電圧レギュレータ

LTC3716を使った40AインテルIMVP-III電圧レギュレータのデザインを図1に示します。Q3、Q4およびQ6により、それぞれバッテリモード、深いスリープモード、およびさらに深いスリープモードの出力オフセットが与えられます。D4により、“H”から“L”への負荷過渡が高速化され、同時にバーストモード®動作が可能で、軽負荷時にも高効率が維持されます。抵抗分割器(R1/R2)はIntel MobileVoltage Positioning (IMVP)の要件を、電力損失を増大させることなく実現します。全体的効率と過渡波形をそれぞれ図2と図3に示します。開放された空気中で、換気なしの周囲温度25°Cの環境で、20分の連続全負荷動作後、両方のインダクタの測定温度は70°Cで、MOSFETの測定温度は65°Cでした。

図1.インテルのモバイルTualatinプロセッサおよびNorthwoodプロセッサ用の40A IMVP-III VR電源のデザイン

図1.インテルのモバイルTualatinプロセッサおよびNorthwoodプロセッサ用の40A IMVP-III VR電源のデザイン

図2.図1の回路による広範囲の負荷電流にわたる高効率の維持

図2.図1の回路による広範囲の負荷電流にわたる高効率の維持

 
図3.7個のSP出力コンデンサで、十分なマージンをもって仕様のリミット内に収まった出力変化

図3.7個のSP出力コンデンサで、十分なマージンをもって仕様のリミット内に収まった出力変化

まとめ

最新のインテルのモバイルCPUは最大40Aの電源電流を必要とします。性能、コスト、および信頼性の最適の組み合せとして、LTC3716 2フェーズ・ソリューションはサイズが小さく、高効率で高電流を供給します。LTC3716の他の特長として、真の電流モード制御、正確な電流分担、±1%のリファレンス精度、可変ソフトスタート、広い(4V~36V)入力範囲、および複数の回路保護機能があります。

著者

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David Chen