DN-321: 400mVのリファレンス付きデュアル・マイクロパワー・コンパレータによるモニタ機能とコントロール機能の簡素化

はじめに

LT®6700デュアル・コンパレータは、スペースが厳しく制約されているデザインで部品点数を減らすため、トリミング調整された400mVバンドギャップ・リファレンスやヒステリシスなどの機能を内蔵しています。LT6700は低電圧マイクロパワー単一電源動作(1.4V~18V、7µA標準)やOver-The-Top® I/O機能も備えており、多用途に使え、特にバッテリ駆動の携帯用アプリケーションに最適です。出力はオープン・コレクタなのでワイヤーANDが可能で、リレーやLEDインジケータなどの比較的重い負荷(最大40mA)をドライブすることができます。

LT6700は広い範囲のデザイン構成をサポートしますが、それにもかかわらずピン数の少ないパッケージ(ThinSOT、6ピン)で供給されます。これは、それぞれ入力構成の異なる3つのバージョンでLT6700を提供することによって可能となりました。LT6700-1を使うと、設計者は反転入力を1つと非反転入力を1つ利用することができますが、これはウィンドウ検出機能に特に便利です。LT6700-2は反転入力を2つ備えており、LT6700-3は非反転入力を2つ備えています。内蔵リファレンスは、図1に示されているように、各コンパレータ・セクションの入力の1つに接続されており、残りの2つの接続はユーザーによる信号検出のために外部に引き出されています。

図1.LT6700ファミリーのピン機能

図1.LT6700ファミリーのピン機能

「ガス・ゲージ」のバッテリ・モニタ

正確な内蔵リファレンス(全温度範囲で±2%)のおかげで、LT6700を使うと簡単で正確なバッテリ・モニタを簡単に作ることができます。2つのスレッショルドをもったアルカリ電池用バッテリ・モニタの実装例を図2に示します。示されている抵抗値の場合、パック電圧が2V(1セル当たり1V)より下に下がるとピン1の出力は“L”になります。この2Vは約30%の容量が残っていることに相当します。バッテリ・パックが定格寿命終了電圧である1.6V(1セル当たり0.8V)に達すると、ピン6の出力も“L”になります。抵抗分割器チェーンを拡張し、コンパレータを追加すれば、スレッショルド点の個数を簡単に増やすことができます。

図2.マイクロパワー「ガス・ゲージ」バッテリ・モニタ

図2.マイクロパワー「ガス・ゲージ」バッテリ・モニタ

簡単なウィンドウ機能ステータスモニタ

LT6700-1はウィンドウ比較アプリケーションに最適です。この場合、出力のワイヤーAND機能をうまく利用することができます。電圧リミットを超えると光絶縁されたアラーム信号を出力する、48Vパワー・バス・モニタを図3に示します。回路はマイクロパワー動作なので、簡単なツェナー・ダイオードの手法を使って、モニタされる電圧から動作電力を直接得ます。

図3.48Vパワー・バスのステータス・モニタ

図3.48Vパワー・バスのステータス・モニタ

正常な電圧範囲内のバス動作時は、どちらのコンパレータの出力もアクティブではないので、LEDはオンして、アラーム出力は“L”(アラーム・クリア)になります。バス電圧の変動が十分大きいと、コンパレータのひとつがLEDドライブを遮断するので、アラームが有効になります。フォト・トランジスタへの接続を開いたり、LEDの動作を阻害する(つまり、他の開放回路状態の)どんな故障モードでも、目的とするロジック入力でフェールセーフ・アラームを表示します。LT6700は非常に低い電圧まで動作可能なので、バス電圧が大きく低下しているときでも、確実に正しいアラームを表示します(さらに、22Vのツェナー・ダイオードにより、LEDをディスエーブルすることによるバスのパワー・ダウンの遷移時にも、誤って故障が表示される可能性はありません)。

マイクロパワー・サーモスタット/温度アラーム

400mVのリファレンスを回路開発者が直接利用できるわけではありませんが、反転コンパレータのセクションを使って、簡単な「bang-bang」サーボを実装することにより、リファレンスに比例して外部電圧をスケーリングすることができます。この手法を図4に示します。ここでは、等しい抵抗の帰還経路によって乗算器が2に設定されています。反転コンパレータは電流の向きを制御して、入力ヒステリシス・ポイント間にフィードバックが「ぶつかる」ようにコンデンサの電圧を一定に保ちます。LT6700のヒステリシスは公称6.5mVなので、この回路はサーボ・コンデンサに約13mVP-Pのリップルを生じます。

図4.マイクロパワー・サーモスタット/温度アラーム

図4.マイクロパワー・サーモスタット/温度アラーム

実際には他のコンパレータ・セクションが単に抵抗のハーフブリッジの不平衡に基づいてアラームの決定をおこないます。この回路では、サーミスタ抵抗は既知の抵抗に対して釣り合わされるので、サーミスタ・テーブルから目的の温度のRSETを選択することにより、温度スレッショルドを簡単に設定することができます。示されているサーミスタに対して抵抗は約-4.4%/°C変化するので、出力信号の温度ヒステリシスは約0.4°Cで、ほとんどの環境制御アプリケーションに適しています。サーミスタに並列に接続されたコンデンサにより基準乗算器回路のリップルが除去されます。この回路はマイクロパワー電力消費なので、普通の3Vコインセル(たとえば、CR2032)で2年を超す連続運転が可能です。

まとめ

LT6700を使うと、スレッショルドをベースにしたステータス機能と制御機能のための小型で消費電力のきわめて小さなソリューションを実現することができます。電源範囲が非常に広く、Over-The-Top機能を備えているので、産業用アプリケーションや携帯用のバッテリ駆動型製品に最適の性能が実現されます。

著者

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Jon Munson

Jon Munson。アナログ・デバイセズのシニア・アプリケーション・エンジニア。シグナル・コンディショニング製品群を担当。サンタクララ大学で電子工学およびコンピューター・サイエンスのBSを取得。これまで、計測器、ビデオ、通信関係の製品のハードウェア設計に従事。2人の娘の養育に関わりながら、余暇にはHi-Fiオーディオ、航空、DIYなどを楽しむ。