DN-456: 1ドルのA/Dコンバータで1000ドルのセンサーのデジタル化
はじめに
LTC2450は16ビット、シングルエンド入力のデルタシグマADCで、2mm×2mm DFNパッケージで供給されますが、その小さなサイズと低コストによって欺かれないようにしてください。2LSBのINL、2LSBのオフセット、0.01%の利得誤差など、LTC2450のDC仕様はすばらしく、多くのハイエンドの産業用センサーに、また、データ収集、測定、制御および汎用電圧モニタの様々なアプリケーションに最適です。
精確なADCによる精確なセンサーのデジタル化
セトラシステムズ社のModel 270はすばらしく高精度の気圧センサーで、気象台や半導体製造工場でよく使用されます。600〜1100ミリバールの入力範囲は0V〜5Vの出力に相当します。このセンサーは高精度であるにもかかわらず、その性能を完全に引き出すのに高価なADCは必要ありません。LTC2450のDC仕様はSetra 270の0.05%の精度に対して十分すぎるほどです。基本的な接続を図1に示します。階段を上り下りし、各段で短時間休んだときの気圧の変化を図2に示します。サンプル2500の後、センサーは階段の一番下に留まって周囲の気圧の変化だけを測定します。グラフの終端近くのスパイクはドアの開閉によるものです。Setra 270は、負出力が負の励起電圧より公称5V上なので、4端子デバイスとして取り扱う必要があります。センサーを励起する絶縁型電源を図3に示します。4.7μFのコンデンサにより、スイッチング・ノイズが測定に影響するのを防ぎます。
図1.16ビットの気圧測定
図2.階段の気圧
図3.24V絶縁型励起電源
目立たない特長
ミックス信号の設計者は、サンプルの平均をとることにより、ADCからもっと分解能を引き出そうと試みることがよくあります。平均化は信号の帯域幅を減らして分解能を改善しますが、処理のための資源を消費し、ファームウェアを複雑にし、アプリケーションはそんなに高速のデータ・レートを必要としていなくても高速のADCの使用が必要になります。また、精度は改善されません。LTC2450は本質的に非常に高精度で、平均化を行います。LTC2450のフロントエンドのサンプル・レートは3.9Mspsですが、Sinc1デジタル・フィルタにより、1秒当り30サンプルに間引きされます。フィルタの実効帯域幅は約30Hzです。つまり、30Hz〜3.9MHzのノイズは大きく減衰します。簡単な1ポール・フィルタと組み合わせると、広帯域ノイズは一般に心配いりません。
LTC2450の画期的特長は独自の変調器スイッチング方式で、同様の仕様のADCに比べて何桁も平均入力電流を減らします。通常は、RCフィルタは、抵抗を流れるADCの平均入力電流によりオフセットと利得誤差を生じます。LTC2450の平均サンプリング電流は50nAと非常に低く、1k、0.1μFのフィルタで生じる誤差は1LSB以下です。このフィルタはADCをドライブするほとんどのアクティブ・デバイスの広帯域ノイズを制限するだけでなく、変調器からのサンプリング電流「スパイク」がソースに影響を与えるのを防ぐのにも十分適しています。
まとめ
メーカーが高精度ADCの分解能が最大32ビットであると言うとき、また、8ビットから32ビットの間の多数の紛らわしい選択肢があるとき、しかも、多くの場合データシートがきわめて分りにくいとき、LTC2450のような「中程度のスピードの中程度の分解能の」デバイスはどんな場合にぴったりするのでしょうか。それは、回路をテストするのに4-1/2桁(40,000カウント)のデジタル電圧計を使う場合は大抵適しています。性能範囲の他端では、LTC2450は多くの12ビットADCより経済的です。次回ADCを探すときは、LTC2450をご検討ください。このデバイスが必要とされる性能をちょうど満たしているかもしれません。また、ミニサイズであり、わずかな基板スペースしか占めず、価格もミニです(1,000個での単価$1.15)。
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