開放電圧(OCV)をベースとした残量ゲージを用いるリチウムイオン(Li+)セルの特性評価
要約
DS2786は開放電圧(OCV)をベースとした残量ゲージで、リチウムイオン(Li+)セルに蓄積された総エネルギを通知します。このデバイスは最適OCVプロファイル付きで出荷され、それはLi+セルの残量を正確に予測するために使用することができます。DS2786 OCV残量ゲージの精度は、Li+セルが使われるアプリケーションの条件下でのLi+セルの特性評価によって改善することができます。
はじめに
スタンドアロン、開放電圧(OCV)ベースの残量ゲージのDS2786は緩和時間の後の開放状態でのセル電圧をベースにして充電可能なリチウムイオン(Li+)バッテリの使用可能容量を推定します。開放電圧はこのICに格納された参照表に基づいて相対セル容量を決定するために使用します。DS2786は、このデバイスのEEPROMにロードされた最適OCVプロファイル付きで出荷されます。DS2786の精度はアプリケーションで使用される充電および放電パラメータを用いてLi+セルのOCVプロファイルをカスタマイズすることによって改善可能です。
このアプリケーションノートはOCVベースの残量ゲージを使用するLi+セルの特性評価、データの収集と解釈、および、その後のDS2786K用の評価用ソフトウェアにこのデータをロードする方法の概要を示します。
Li+セルの特性評価の手順
- フルおよびエンプティポイントの決定
- セルの特性評価
- セルをフルポイントまで充電する。
- セルを0%ポイントまで放電してセルの容量を知り、それをmAhで記録する。
- セルをフルポイントまで充電する。
- セルを60分間リラックスさせる。
- 100%ポイントの開放電圧を記録する。
- およそ0.2Cの速度でセルを5% (ステップ2で得られた容量に基づく)放電させる。
- セルを60分間リラックスさせる。
- 95%ポイントの開放電圧を記録する。
- 容量が0%に達するまでステップ6~8を19回繰り返す。
- データの解析
- データの格納
Li+セルの特性評価の最良な方法は、セルが使用される実際のアプリケーションに可能な限り近い環境を作ることです。これには保護回路、該当アプリケーションの標準的なアクティブおよびスタンバイ電流からなる放電プロファイル、および充電プロファイルなどがあります。このためにはセルの充電と放電をシミュレートする方法、および電流と電圧を記録する方法が必要です。
フルポイント(100%容量)はLi+セルが充電回路によって充分に充電されていると考えられる容量として定義されます。エンプティポイント(0%容量)はアクティブエンプティポイント、スタンバイエンプティポイント、またはセルに残っている絶対エネルギとして定義することができます。
OCVをベースとした残量ゲージを使用するLi+セルの特性評価の手順は室温で実施することができます。平均のOCVプロファイルを得るために最低3つのセルについて次の各ステップに従うことが最良です。
表1はマキシムが特性化した標準的なセルのサンプルデータを示します。20個の容量/OCVペアはDS2786のEEPROMに格納する9ペアに要約しなければなりません。100%と0%はペアとしてデバイスに格納する必要があります。完全なデータセットを近似するためには、その他に7ポイントを選択しなければなりません。表2は表1のデータを近似するために選ばれた9つのデータペアを示します。図1は表1と表2のデータを比較しています。
Capacity (%) | OCV (V) |
100 | 4.177454 |
95 | 4.129486 |
90 | 4.085934 |
85 | 4.045427 |
80 | 4.008118 |
75 | 3.974769 |
70 | 3.945074 |
65 | 3.917968 |
60 | 3.884009 |
55 | 3.841219 |
50 | 3.820965 |
45 | 3.805737 |
40 | 3.79325 |
35 | 3.783504 |
30 | 3.775129 |
25 | 3.762185 |
20 | 3.741018 |
15 | 3.7098 |
10 | 3.686654 |
5 | 3.674776 |
0 | 3.305545 |
Breakpoint | Capacity (%) | OCV (V) |
8 | 100.0 | 4.177454 |
7 | 82.5 | 4.026773 |
6 | 60.0 | 3.884009 |
5 | 55.0 | 3.841219 |
4 | 40.0 | 3.79325 |
3 | 25.0 | 3.762185 |
2 | 10.0 | 3.686654 |
1 | 5.0 | 3.674776 |
0 | 0.0 | 3.305545 |
図1. OCV特性データと9つの近似ブレークポイント。
最後のステップは、このデータをDS2786のEEPROMに設定することです。DS2786Kの評価ソフトウェアは、データをEEPROM内に格納するために適したフォーマットに容易に変換することができます。図2に示すように表2の値をDS2786KのParametersタブに単純にロードしてください。さらにセルの容量(ステップ2で分かった)をInitial Cell Capacityのテキストボックスに入力してください。その後、Write & Copyボタンをクリックしてください。EEPROMが正しくプログラムされるためにプログラミング電圧がDS2786のVPROG端子に印加されていることを確認してください。
図2. DS2786Kの評価ソフトウェアのパラメータタブ
結論
マキシムのOCVベースの残量ゲージアルゴリズムはアプリケーションによってセルが充電および放電されるときのLi+セルの容量を追跡する正確な手段を提供します。マキシムが提供する評価ソフトウェアを使って特性データが収集されて格納された後は、残量ゲージが正確にセルの残容量を推定します。