電流測定のオフセット誤差を低減したDS2740U代替アプリケーション回路

要約

DS2740では、その電流測定A/Dにおいて正のオフセットバイアスがわずかに生じます。これは入力の1つをデバイスグランドと共有しているために生じるものです。代替回路を使用すると、A/Dの入力フィルタを除去することによりこのオフセット誤差を取り除くことができます。

はじめに

DS2740データシートの推奨回路には、A/D用の入力フィルタ(IS1/IS2端子に接続するコンデンサと2つの10k内部抵抗によって形成)が含まれていますが、1つの検出線をVSS経由のデバイスグランドと共有していることによって生じる+1 LSBの平均オフセット誤差を持ちます。このアプリケーションノートでは、入力フィルタを犠牲にして正のオフセット誤差を取り除く代替回路について説明します。

アプリケーション回路

図1に示す回路は、データシートのアプリケーション回路と同じですが、以下の変更を実施しています。すなわち、1) IS1とIS2の間のフィルタコンデンサを取り除いた。2) IS1とIS2を検出抵抗の両端に直接接続している。3) SNSをオープンにしている。このことによって得られた回路を使用すると、DS2740Uは、RSNSを通じて電流を測定することができ、VSSから流れるデバイス自体のアクティブ電流によって生じる通常のオフセットバイアスが生じることはありません。この結果、電流測定のオフセット範囲は通常のデータシート仕様である-3 LSB~+5 LSB (+1 ±4 LSB)ではなく-5 LSB~+3 LSB (-1 ±4 LSB)になります。

図1. IS1/IS2を検出抵抗に接続し、SNSをオープンにした代替回路
図1. IS1/IS2を検出抵抗に接続し、SNSをオープンにした代替回路

0.020Ωの標準検出抵抗を使用した場合、DS2740Uのアクティブ電流に対して-1 LSBがそれに対応する誤差であり、代替回路の精度は、平均で2 LSB (すなわち1日当たり約1.9mAH)だけ向上します。オフセット誤差を低減したことによるトレードオフとしてIS1/IS2フィルタが消失することになります。ほとんどのアプリケーションはこの影響を受けませんが、繰り返し電流スパイクがA/Dのダイナミックレンジ(102mV)より大きいアプリケーションの場合は、フィルタを除去したときに利得精度が低下するかどうかを評価する必要があります。

まとめ

IS1とIS2を検出抵抗に直接接続することによって平均で2 LSB (0.020Ωの検出抵抗の場合1日当たり1.9mAH)だけ、DS2740Uのオフセット誤差を低減することができます。ほとんどのアプリケーションは、この入力フィルタを除去しても影響を受けることはありませんが、高電流アプリケーションの場合は、精度に影響を及ぼすことなくフィルタを除去できるかどうかを判断するために評価を実施する必要があります。