DN-165: 5V電源で動作する新型16ビット100ksps A/Dコンバータ

LTC®1605は、リニアテクノロジーの新型16ビット100ksps ADCです。卓越したDC精度と±10Vアナログ入力範囲は、産業用コントロールや計装アプリケーションに最適です。単純なI/O、低消費電力、高性能といった特長により、広いダイナミックレンジと高分解能を必要とするアプリケーションに容易に応用できます。

製品の特長

  • 全温度範囲において、ミッシング・コードなし、最大±2LSBのINL
  • 標準電力消費55mWの5V単一電源
  • 過酷な環境で動作可能な±20Vの過電圧保護付き±10Vアナログ入力
  • サンプル・ホールドとリファレンスを備えた完全なADC
  • 28ピンPDIP、SO、およびSSOPパッケージ

回路説明

LTC1605は5V電源で動作しながら、±10Vアナログ入力信号を変換します。抵抗ネットワークを使用して、入力信号を減衰させます。この低減された内部信号は、差動スイッチト・キャパシタ16ビットSAR ADCによって、最高100kspsの速度でデジタル化されます。差動アーキテクチャにより、電源と他の外部ノイズ発生源に対し高い余裕度を提供します。調整された2.5Vバンドギャップ・リファレンスは、必要に応じて外部リファレンスでオーバドライブできます。

図1. 16ビット性能を提供し、5V単一電源動作で±10V入力に対応するLTC1605

図1. 16ビット性能を提供し、5V単一電源動作で±10V入力に対応するLTC1605

デジタル・インタフェースは単純です。変換はRead-Convert(R/C)ピンを使って開始されます。データは16ビット・ワードまたは2つの8ビット・バイトとして利用できます。

ACおよびDC性能

図2に、LTC1605によって100kspsでデジタル化される±10V/1 kHzの正弦波信号の高速フーリエ変換(FFT)を示します。LTC1605は、87.5dBの信号対雑音+歪み(SINAD)と-101.7dBの超低全高調波歪み(THD)を達成しています。

図2. 87.5dB SINADと-101.7dB THDを達成するLTC1605のAC性能

図2. 87.5dB SINADと-101.7dB THDを達成するLTC1605のAC性能

図3に、LTC1605のINLエラー・プロットを示します。仕様では全インダストリアル温度範囲(-40~85°C)において、16ビットで±2.0LSB INL(最大)とミッシング・コードなしが保証されています。このADCの卓越した精度は、工場出荷時の調整によって保証されます。これにより、ユーザはソフトウェア経費と、自動較正ADCに関連する較正時間の遅れをなくすことができます。

図3. 複雑な自動較正なしで卓越したINLを達成するLTC1605

図3. 複雑な自動較正なしで卓越したINLを達成するLTC1605

LTC1605の差動アーキテクチャの利点の1つは、電源除去比(PSRR)が高いことです。図4に、LTC1605の電源除去比と周波数の関係を示します。

図4. LTC1605の差動アーキテクチャによる良好な広帯域電源除去

図4. LTC1605の差動アーキテクチャによる良好な広帯域電源除去

16ビット量子化ではLSBの大きさがちょうど305mV(VIN=20VP-P)なので、LTC1605の変換精度およびS/N性能には高PSRRであることが重要です。LTC1605の高PSRRは、最大100mVの電源ノイズをLSBレベル以下まで除去します。

アプリケーション

LTC1605は過電圧保護された±10Vアナログ入力を備えているため、産業用プロセス・コントロール、パワー・マネージメント、データ収集ボードに簡単に組み込むことができ、多チャンネル・アプリケーションに十分な処理速度を提供します。また、LTC1605はPGAと低分解能ADCを使用する、広いダイナミックレンジ・アプリケーションにも最適です。たとえば、LTC1605はより単純なソリューションであり、1~16の利得範囲でPGAの出力を変換する12ビットADCより(DNL、INL、およびS/Nに関して)優れています。

まとめ

LTC1605は、内蔵サンプル・ホールドとリファレンスを備えた完全な16ビットADCです。広いアナログ入力範囲、過電圧保護、およびDC精度を有しており、産業用プロセス・コントロール、計装、および他の高ダイナミック・レンジ・アプリケーションに最適です。

著者

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Sammy Lum

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Kevin Hoskins