DN-159: 12ビット・システムをアップグレードするSINAD 81.5dB、SFDR 95dBの新14ビット800ksps ADC

高ダイナミックレンジADC

新製品の14ビット、800kspsのLTC®1419は、12ビット・コンバータのユーザにアップグレードの道を提供することにより、新世代の通信、スペクトル分析、計測機器、データ収集アプリケーションの機能を向上します。周波数支配のアプリケーションに対しては卓越した81.5dBのSINAD(信号とノイズ+歪み比)と95dBのSFDR(スプリアス・フリー・ダイナミック・レンジ)を、そして時間支配のアプリケーションに対してはミッシング・コードのない優れたDNLを提供します。

LTC1419の特長

  • 完全な14ビット800ksps ADC
  • ±1LSBのDNL、±1.25LSBのINL(最大)
  • 81.5dBのSINAD、95dBのSFDR
  • 低消費電力:±5V電源で150mW
  • ナップ/スリープ・パワーダウン・モード
  • 小さな実装面積:28ピンSO、SSOP

LTC1410の上位同系列品

新型のLTC1419は12ビットLTC1410の14ビット・バージョンで、図1のブロック図に示す機能と近似のピン配置を備えています。広帯域差動サンプル・ホールド(S/H)の帯域幅は20MHzで、差動またははシングルエンド信号をサンプリング可能です。このADCは差動でドライブしないと十分に動作しないコンバータとは異なり、シングルエンド信号でも差動信号でも同様に良好に動作します。

図1. 広帯域入力信号をクリーンにサンプリングする高速S/Hを備えたLTC1419 14ビット、800ksps ADC

図1. 広帯域入力信号をクリーンにサンプリングする高速S/Hを備えたLTC1419 14ビット、800ksps ADC

スイッチト・キャパシタSARアーキテクチャにより、優れたDCスペックと高安定性を実現しています。低ノイズで使いやすく、±5V電源ではわずか150mWの消費電力で800kspsの変換レートを達成します。

このADCの柔軟性に富むパラレルI/Oは、DSP、マイクロプロセッサ、ASIC、または専用ロジックに簡単に接続可能です。変換はDSPまたはマイクロプロセッサのコマンドにより、あるいは外部サンプル・クロック信号で開始できます。出力ディスエーブルを使用して、出力を3ステートにすることができます。

信号アプリケーションでの10dBのダイナミック・レンジの拡張

LTC1410は市販されている最もクリーンな12ビットADCですが(SINAD 72dB、SFDR 85dBは12ビットの理論値に近い)、LTC1419を使用すればさらに向上させることが可能です(図2参照)。14ビット・デバイスはSINAD 81.5dB、SFDR 95dBを達成しています。これによって、通信およびスペクトル分析アプリケーションでのコンバータの小信号分解能が約10dB改善されます。このクリーンなサンプリング能力は広帯域入力に対しても維持されます。図3にナイキスト周波数を超える入力に対する有効ビット数とSINADを示します。

図2. 最良の12ビット・デバイスよりスペクトル純度が10dB良好なLTC1419。LTC1419の卓越したSINAD 81.5dBおよびSFDR 95dBを示すFFT

図2. 最良の12ビット・デバイスよりスペクトル純度が10dB良好なLTC1419。LTC1419の卓越したSINAD 81.5dBおよびSFDR 95dBを示すFFT

図3. 本質的にフラットなSINADとENOBにより、ナイキストまでの周波数でのスペクトル純度を保証し、2MHz入力サンプリング時でも12ビット性能を達成するするLTC1419

図3. 本質的にフラットなSINADとENOBにより、ナイキストまでの周波数でのスペクトル純度を保証し、2MHz入力サンプリング時でも12ビット性能を達成するするLTC1419

ノイズ除去差動入力

コンバータの分解能が向上しノイズ・フロアが低下するにしたがって、除去しない場合には他のシステム・ノイズが目立ってきます。LTC1419は差動入力によって、ノイズの混入を阻止します。ノイズはグランド・バウンス、デジタル・ノイズ、および電磁結合、容量結合など多くの原因で誘発されます(図4a参照)。図4bのように、信号源を差動サンプリングすれば、これらの要因をすべて大幅に低減できます。差動入力はCMRRが高い(図5)ので、LTC1419は結果的に生じる同相ノイズを60dB以上除去し、クリーンな信号を維持することができます。

図4. A)高分解能ADCシステムで、ADCの入力信号に混入するグランド・ノイズや電磁結合などのノイズ源。B)高周波でもこのノイズを除去可能なLTC1419の差動入力

図4. A)高分解能ADCシステムで、ADCの入力信号に混入するグランド・ノイズや電磁結合などのノイズ源。B)高周波でもこのノイズを除去可能なLTC1419の差動入力

図5. 10MHz以上の同相入力ノイズ周波数を除去するアナログ入力の同相除去性能

図5. 10MHz以上の同相入力ノイズ周波数を除去するアナログ入力の同相除去性能

その他の特長

  • 両アナログ入力ともDC入力抵抗は非常に高く、容易に多重化やAC結合が可能
  • 独立した変換スタート入力ピンにより、サンプリングのタイミングを精密に制御可能。S/Hのアパーチャ遅延は2ns以下、アパーチャ・ジッタは5ps RMS以下
  • 変換直後に変換結果が得られ、データ待ち時間なし(パイプライン遅延なし)。シングル・ショットおよび反復測定の両方に最適
  • ADCのナップおよびスリープ・パワーダウン・モードを使用すれば、150mWの低消費電力をさらに低減可能。ナップ・モードからの復帰は即時に、スリープ・モードからの復帰時間は数ms
  • LTC1419は業界最小の高速14ビットコンバータで、28ピン広型SSOPパッケージで提供

アップグレードをお勧めします

新型の低コストLTC1419は、12ビット・コンバータをアップグレードするのに最適な14ビット高性能コンバータです。優れたダイナミック性能を達成し、最高の12ビット・デバイスと比較して、ダイナミック・レンジが10dB改善されています。低消費電力と柔軟性を備え、各種の時間支配および周波数支配アプリケーションに幅広く対応します。低コストおよび超小型であり、より高いADC性能を必要とする用途に最適です。

著者

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Dave Thomas

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Kevin Hoskins