Customer Case Study
アルパイン株式会社様 採用事例
ライセンス数を気にせず、誰もが使えることはもちろん、CADやCAEとのデータ連携にも対応しているため設計データの一元化に有効
カーナビや高品位カーオーディオをはじめ、近年はマルチビュー・カメラなどの車載機器を手掛けるアルパインは、スイッチングレギュレータ周りの設計効率化および設計品質向上を主な目的に、LTspiceの活用を拡大しています。合わせて「アナログ回路シミュレーション検定」を導入し、エンジニアの技術スキルの把握と向上にも取り組んでいます。
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アルパイン株式会社
回路技術部回路技術5G
主任技師
河野 繁氏
カーナビやカーオーディオなどをグローバルに展開するアルパインは、ハードウェアの設計効率化と設計品質の向上を目的に、2016年から、設計ツールのさらなる導入と活用を進めています。その一環として同社が回路設計ツールとして導入したのがLTspiceです。「開発プロセスの中でシミュレーションをより積極的に活用していくことを目的に、業界で広く使われているLTspiceをハードウェア部門全体に導入しました」と、電気電子設計を全社共通部門として見ている回路技術部の河野繁氏は説明します。
同社では従来、商用SPICEを導入していましたが、ライセンス費用が高いことから同時使用数に制約を設けていたため、実質的に活用が進んでいませんでした。そのような状況の中、全社のツール環境を取りまとめている技術戦略室の阿部和正氏は、LTspiceを選定した理由について次のように述べています。
「LTspiceはフリーということでライセンス数を気にせずに誰もが気軽に使えることはもちろん、一部のCADやCAEとのデータ連携にも対応しているため設計データの一元化にも有効と判断し、河野とも相談しながら導入を決めました」。
さらに、設計ツールとしてだけではなく、スキルアップツールとしての活用も導入の目的のひとつだったと河野氏は補足します。「ある部品が回路の中でどういう役目を果たしているのか、その部品は何のために必要なのか、といったことを理解するには、実際の回路を使って実験する方法もありますが、やはり手軽に試せるシミュレータのほうが便利です。LTspiceによって技術レベルの底上げも図れると考えました」。
スイッチングレギュレータ回路のシミュレーションでは多大な時間を要するが、LTspiceはきわめて高速な処理を実現し、収束時間は桁違いに速い
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アルパイン株式会社
技術戦略室
DM戦略グループ
阿部 和正氏
アルパインではLTspiceを標準ツールのひとつと位置づけて、ハードウェア設計担当者全員にインストールを推奨。主に車載機器の電源回路(スイッチング・レギュレータ)の設計に活用しています。「製品開発の初期フェーズとなる理論設計の段階でLTspiceを用いて回路方式や動作を検証し、その結果をデザインレビューで確認しながら回路を固めていきます。その後は試作した実回路で挙動を確認し、LTspiceの結果と合わない場合は理論設計に立ち返って各所の部品や定数を見直しながら再検証を行う、というのが大まかな流れです」と河野氏は説明します。
一般にスイッチングレギュレータ回路のシミュレーションでは収束に多大な時間を要することが指摘されますが、LTspiceは内部のモデル化を工夫することできわめて高速な処理を実現しており、実際に「以前使っていた商用SPICEに比べて、収束時間は桁違いに速い」と河野氏は評価します。ちなみに、LTspiceの導入にあたっては提供元のアナログ・デバイセズにオンサイトのセミナーを依頼。4回のセミナーで延べ90人ほどの設計担当者が受講し、基本的な使用方法をマスターしました。
LTspiceを導入したもうひとつの目的であるスキルアップに関しては、LTspice Users Clubが主催する「アナログ回路シミュレーション検定」も合わせて導入。まずは河野氏が所属する回路技術部の35人が同検定を受験したところ、同社が社内で設けている独自のスキルアップテストの初級レベルと上級レベルのほぼ中間ぐらいとのアンケート結果がまとまったそうです。
「『アナログ回路シミュレーション検定』は回路の基礎だけではなくLTspiceの使いこなしも問うので、外部が主催しているいくつかのスキル検定の中では当社のニーズにもっともマッチしていると考えています」(河野氏)。
「アナログ回路シミュレーション検定」をハードウェア部門全体に広めるなどして、設計者の技術スキルの把握と底上げに。
同社は2017年から一部製品の設計にLTspiceを適用。「ここ半年ほどの間に数件のスイッチングレギュレータ回路の設計に適用しましたが、回路の品質向上と設計期間の短縮に明らかな成果が得られています」と河野氏は述べています。
今後アルパインでは、LTspiceを適用する製品を拡大するとともに、電源系/グランド系も扱える電磁界解析ツールなどとデータ連携を図りながら、開発プロセスのさらなる効率化に取り組んでいく予定です。
さらに、ツール環境の運用についても効率化を検討中とのこと。「いずれは各ユーザーがLTspiceを起動すると同時にSync Release(アップデート)を自動で行うような仕組みを構築できればと考えています」(現在はSync Releaseは管理者権限でしか実行できないため、こうした運用には若干の制約があります)。
また、「アナログ回路シミュレーション検定」をハードウェア部門全体に広めるなどして、設計者の技術スキルの把握と底上げに利用していく考えです。
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アルパイン株式会社
「モービルメディアの未来価値へ」をコーポレートメッセージとして掲げ、カーナビや高品位カーオーディオなどをグローバルに展開しながら、カーライフを豊かにする次世代の価値創造に取り組む。https://www.alpine.com/j/
※ 本事例の情報は2018年2月時点のものです。