ビットエラーレートテスト回路内蔵、2.5Gbpsサーデスを使用したリンク品質測定の簡略化
要約
高データレートでの情報の長距離送信を伴うアプリケーションには、優れたリンク品質を保証するためのテストが必要です。したがって、オーディオ/ビデオデータを最大2.5Gbpsのペイロードレートで、最長15mの単線ツイストペアケーブルを経由して送信するチップセット、MAX9259/MAX9260ギガビットマルチメディアシリアルリンク(GMSL)シリアライザ/デシリアライザ(サーデス)にも、それが当てはまります。このアプリケーションノートでは、内蔵のビットエラーレート(BER)テスターの使用方法と、MAX9259/MAX9260評価(EV)キットでアイダイアグラムを解析してリンク品質を測定する方法を説明します。また、このアプリケーションノートは、正しいジャンパ設定、測定手順、結果の認識にも役立ちます。
はじめに
高データレートでの情報の長距離送信を伴うアプリケーションには、優れたリンク品質を保証するためのテストが必要であり、MAX9259/MAX9260ギガビットマルチメディアシリアルリンク(GMSL)シリアライザ/デシリアライザ(サーデス)も例外ではありません。このチップセットは、オーディオ/ビデオデータを最大2.5Gbpsのペイロードレートで、最長15mの単線ツイストペアケーブルを経由して送信します。リンク品質の最も単純なテストの1つは、ビットエラーレート(BER)テストです。このテストでは、トランスミッタがシリアルリンク経由で既知のデータパターンを送信し、レシーバが着信データにビットエラーがないかどうかをチェックします。2つめのテスト、アイダイアグラムでは、リンク品質をグラフィカルに表現することができます。
どちらのテストでも、適切なパターンを生成し、シリアルリンク経由で送信する必要があります。さまざまなテストパターンが利用可能ですが、一般的な選択肢の1つは、長い擬似乱数ビットシーケンス(PRBS)を使用することです。
MAX9259/MAX9260チップセットは、PRBSジェネレータとBERチェッカを内蔵しているため、簡単にテストを実施することができます。必要なのは、パラレルクロックと、デバイスをプログラムするためのUARTポートのみです。MAX9259は、230 - 1 (32ビットモードの場合)または222 - 1 (24ビットモードの場合)のPRBSデータパターンをシリアルリンク経由で送信します。MAX9260は受信データをチェックし、ビットエラーの数を記録します。このアプリケーションノートでは、MAX9259/MAX9260の評価(EV)キットを、ビットエラー解析による内蔵PRBSテスト用にセットアップする方法を説明します。また、15mケーブルを使用したプリエンファシス/イコライザのデフォルト設定と最適化設定について、テスト結果を比較します。
このチップセットとEVキットのデータシートや最新ソフトウェアは、マキシムのウェブサイトから入手することができます。
必要機器
- MAX9259とMAX9260のEVキット
- Agilent® 33250A任意波形ジェネレータ、または類似したクロック生成用デバイス
- USBケーブル
- シールド付きツイストペアケーブル、Rosenbergerコネクタ付き
(アイダイアグラム解析用のオプション)
- Agilent DSO81004B、または類似した広帯域幅デジタルオシロスコープ
- Tektronix® P6248差動プローブ、または類似したプローブ
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図1. MAX9259/MAX9260のEVキットを15m STPケーブルで接続したベンチセットアップ
内蔵BERテスト
一般に、PRBS出力をシリアライザから取得するには、シリアライズするすべての入力でデータ入力が必要です。MAX9259の場合は、ビデオ、オーディオ、UARTの各入力でデータ入力が必要になります。これら3つのインタフェースのビットレートが大きく異なるため、これは極めて複雑な作業になる可能性があります。MAX9259には、UARTコマンド1つだけで制御することができるPRBSジェネレータが内蔵されています。PRBSジェネレータをオンにするには、MAX9259でPRBSEN = 1を設定します。シリアルデータレートは、バス幅選択(BWS)に基づいて、30x PCLK (24ビットモード)または40x PCLK (32ビットモード)になります。
下の表1は、各種のPCLK周波数、Rosenbergerコネクタ付き15m STPケーブル、プリエンファシス1.1dBまたは10.5dB、イコライゼーションレベル9.4dBで実施したBERテストの結果を示しています。
表1. 各種PCLK周波数、プリエンファシス1.1dBまたは10.5dB、イコライゼーションレベル9.4dBの設定による15m、32ビットBERの結果 | ||
Input PCLK Frequency (MHz) | Errors at 1.1dB Preemphasis | Errors at 10.5dB Preemphasis |
12.5 | 0 | 0 |
15 | 0 | 0 |
20 | 0 | 0 |
25 | 0 | 0 |
30 | 0 | 0 |
35 | 0 | 0 |
40 | 0 | 0 |
45 | 0 | 0 |
50 | 23 | 0 |
55 | 78 | 0 |
60 | 106 | 0 |
65 | 255 | 0 |
PRBSモードのアクティブ化
テスト手順を開始するには、以下のガイドラインに従ってEVキットの電源を投入し、ソフトウェアを起動します。
- MAX9259EVKIT/MAX9260EVKITのデータシートで説明されているクイックスタート手順を実行して、EVキットのボード、ソフトウェア、ドライバが正しくインストールされ、動作していることを確認します。
- すべてのジャンパが下記の表2に示す位置に設定されていることを確認します。
表2. MAX9259/MAX9260のEVキットのPRBSテスト用ジャンパ設定 Jumper Signal Shunt Position Description JU1 CDS 2-3 CDS = low; ECU attached to MAX9259; connect USB to MAX9259 EV kit SW1 MS 2-3 (toggle switch down) MS = low; half-duplex base mode; required when writing to device registers or when using an external I²C peripheral JU2 BWS 1-2 BWS = high for 32-bit bus mode JU3 ES 2-3 ES = low JU4 DRS 2-3 DRS = low for parallel input data rates of 12.5MHz to 78MHz (32-bit bus mode) JU5 SSEN 2-3 SSEN = low JU6 PWDN 1-2 PWDN = high JU7 AUTOS 2-3 AUTOS = low JU8 H1 odd pins 2-3 2-3 H1 odd-numbered pins connect to GND JU9 BUS power 1-2 J1 pin 1, J4 pin 1, and J5 pin 1 connect to VIN JU10 BUS power 1-2 J1 pin 1, J4 pin 1, and J5 pin 1 connect to USB 5V JU21 AVDD 1-2 AVDD power from 1.8V LDO U2, powered by VIN JU22 DVDD 1-2 DVDD power from 1.8V LDO U2, powered by VIN JU23 IOVDD 1-2 1-2 IOVDD power from 1.8V LDO U2, powered by VIN - STPケーブルをMAX9259のEVキットのコネクタJ1からMAX9260のEVキットのコネクタJ1に接続します。
- パラレルデータソースまたは任意波形ジェネレータの出力をヘッダH1-62、PCLK_INに接続します。パラレルデータソースの周波数を12.5MHz~78MHzの範囲に設定して、出力を有効にします。
- USBケーブルをPCからMAX9259のEVキットに接続します。
- MAX9259のEVキットのLED120が点灯し、マイクロコントローラの電源投入と有効化を示していることを確認します。
- MAX9260のEVキットのLED120が点灯し、マイクロコントローラの電源投入と有効化を示していることを確認します。
- MAX9260のEVキットのLED2が点灯し、リンク確立済みを示していることを確認します。LED2がオフまたはLED1がオンの場合、PCLK_IN信号がデータをクロック制御していることをダブルチェックします。
- Start | Programsメニューからアイコンを開いて、MAX9259/MAX9260のEVキットプログラムを起動します。EVキットソフトウェア設定ウィンドウが表示されます(図2)。
- Connectボタンを押すと、設定ウィンドウが閉じます。
図2. MAX9259/60のEVキットソフトウェア設定ウィンドウ - Read Allボタンを押すと、MAX9259とMAX9260デバイスのレジスタ全体が読み出されます。Write Allボタンを押すと、MAX9259とMAX9260デバイスのレジスタすべてに、図3と図4に示された値が書き込まれます。
図3. MAX9259/MAX9260のEVキットソフトウェアのメインウィンドウ(MAX9259タブ)
図4. MAX9259/MAX9260のEVキットソフトウェアのメインウィンドウ(MAX9260タブ) - MAX9260タブシート(図4)から、8ビットエラーカウントレジスタ(0x0E)を読み出して、PRBSテスト前のエラーをクリアします。
- PRBSテストを開始するには、まずMAX9259、次にMAX9260の順でPRBSEN = 1 (0x04 D5)を設定します。
- PRBSセルフテストを任意のテスト時間のみ実行します。その後、まずMAX9260タブ、次にMAX9259タブの順でPRBSEN = 0 (0x04 D5)を設定し、PRBSセルフテストを終了します。
- MAX9260タブで、一度8ビットエラーカウントレジスタ(0x0E)を読み出します。ビットエラーの総数が「PRBS error counter PRBSERR」のウィンドウにレポートされます。エラーカウンタレジスタは8ビットレジスタであるため、記録可能なエラーの最大数は255です。
アイダイアグラム
BERテストはリンク品質を測定する単純な方法の1つです。システム性能を評価するもう1つの手法は、アイダイアグラムの開口部を解析することです。この手法では、リンク品質をグラフィカルに表現し、チャネル障害の性質について知見が得られます。図5と図6は、15m STPケーブルのデシリアライザ側で、広帯域幅デジタルオシロスコープ(無限パーシステンスモード)によってキャプチャしたシリアルリンクのアイダイアグラムです。アイダイアグラムで違いが見えるように、1.1dB (図5)と10.5dB (図6)のプリエンファシス設定を選択しました。ユーザーは、アイダイアグラムの解析から、インピーダンスの不一致、反射、タイミングの変動のほか、周波数減衰の問題も特定することができます。
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図5. PRBSモード—アイダイアグラム(15mケーブル、プリエンファシス1.1dBの設定)

図6. PRBSモード—アイダイアグラム(15mケーブル、プリエンファシス10.5dBの設定)