AN-957: AD7147 およびAD7148 CapTouch コントローラのレイアウト・ガイドライン

はじめに

このアプリケーション・ノートでは、AD7147 およびAD7148 を使ったCapTouch™コントローラ用センサーのデザインを支援するレイアウト・ガイドラインを提供し、センサー構造とPCB 層構成について説明し、汎用的なレイアウト・ガイドラインおよびEMI とESD に敏感なデザインに対するガイドラインを提供し、センサーを最終デザインに統合する際の助言を示します。 

AD7147 とAD7148 は、単電極センサー向けの容量デジタル・コンバータ(CDC)です。AD7147 は13 本の容量入力を、AD7148 は8 本の容量入力を、それぞれ持っています。AD7147 は、ボタン、スクロール・バー、ホイール、タッチ・パッドのような機能を構成する容量センサーと組み合わせて使うようにデザインされています。AD7148 は、ボタン、スクロール・バー、ホイールと組み合わせて使います。

センサー構造に適する材料

すべての標準的なPCB 材料が容量センサー・デザインに使用可能であるため、業界標準の技術を使ってセンサーを製造することができます。センサー・ボードとパターンの材料例を表 1 に示します。

表 1.センサー製造に適する材料
Sensor Board Sensors
FR4 (and Similar) Copper
Flex (FPC or Polyamide) Copper
PET (Plastic) Indium tin oxide (ITO)/silver/carbon
Glass ITO

センサーPCB の層構成

センサーはPCB の最上層に配置する必要があります。各センサーは、AD7147 またはAD7148 のCIN 入力ピンに接続します。PCB のすべての層で、センサーとセンサー・パターンの周囲をACSHIELDプレーンで囲む必要があります。

PCB 上に配線された他の信号からセンサーへのノイズ混入を防止するため、表 2 に示す層構成が推奨されます。表 3 に示す層構成は、PCB 上に十分なスペースがあり、センサーまたはセンサー・パターンの真下を通過する配線を回避できる場合にのみ使用してください。

表 2.4 層構成のセンサーPCB
Layer Sensors
1 (Top) Layout sensor electrodes and CIN connection traces; surround by 2 mm of an ACSHIELD plane. Place a ground plane around board edges to protect from ESD.
2 Place an ACSHIELD plane under sensors and sensor traces (mirror ACSHIELD and ground plane from Layer 1); do not place digital routing under sensors or ACSHIELD.
3 Route serial interface and other signals, mirror ACSHIELD and ground plane from Layer 1.
4 (Bottom) Place the IC, serial interface, and other signal routing here, mirror ACSHIELD and ground plane from Layer 1.
表 3.2 層構成のセンサーPCB
Layer Sensors
1 (Top) Layout sensor electrodes surrounded by 2 mm of an ACSHIELD plane and a ground plane around board edges to protect from ESD.
2 Place the IC, CIN connection traces with 2 mm of an ACSHIELD plane around sensor traces. Place a serial interface, other signal routing, and other components here surrounded by a ground plane extending to board edges (mirror ACSHIELD and ground plane from Layer 1).

レイアウト・ガイドライン

次のガイドラインはすべてのセンサー・レイアウトに適用できます。

  • 推奨パターン幅は0.2 mm。
  • パターン間の最小間隔は0.15 mm。
  • AD7147 またはAD7148 とセンサーとの最大推奨間隔は10 cm。センサーとAD7147 またはAD7148 のCIN入力との間を接続するすべてのパターンはACSHIELD を使ってシールドする必要があります。
  • PCB のすべての層で、センサーとセンサー・パターンの周囲をACSHIELD プレーンで囲む必要があります。ACSHIELD プレーンは、センサーとセンサー・パターンの周囲で少なくとも1 mm 離れている必要があります(レイアウト例については図 1~図 4 参照)。
  • シリアル・インターフェースとPCB 上のセンサー領域以外の領域を囲んでグラウンド・プレーンを配置します。ACSHIELD プレーンとグラウンド・プレーンとの間の間隔は、製造許容偏差に応じて0.2 mm または0.4mm とすることができます(図 1 と図 2 参照)。
  • AD7147 またはAD7148 をレイアウトする際、ACSHIELD プレーンはCIN パターンとピンを囲むように配置し、グラウンド・プレーンはシリアル・インターフェースと他のデジタル・ピンを囲むように配置します(図 3 と図 4 参照)。
  • 同じACSHIELD とグラウンド・プレーンを下の各PCB 層にも設ける必要があります。
  • センサー電極またはセンサーに出入りするパターンの真下にスイッチング信号を配線しないようにします。
  • センサーの周囲に配線するスペースがセンサーPCB 上にない場合、センサー層の真下にACSHIELDプレーン層を設けます。層間にACSHIELD プレーンがある場合には、下の層での配線はセンサー領域の下を通ることができます。
  • フローティング・パターンは、センサー・パターンの隣を通過しないようにします。すべてのLED信号で100 nF コンデンサをグラウンドとの間に接続してLED パターンがフローティングにならないようにします。
  • シリアル・インターフェース信号は、センサーからできるだけ離して配線します。
図 1.センサー・レイアウト例、最上層
図 1.センサー・レイアウト例、最上層
図 2.センサー・レイアウト例、最下層
図 2.センサー・レイアウト例、最下層
図 3.AD7147 またはAD7148 のレイアウト例、最上層
図 3.AD7147 またはAD7148 のレイアウト例、最上層
図 4.AD7147 またはAD7148 のレイアウト例、最下層
図 4.AD7147 またはAD7148 のレイアウト例、最下層

LED とその他の部品

LED とその他の部品は、センサーと同じPCB 上に配置することができます。LED に対して、LED 制御パターンからセンサー・パターンまでの寄生容量は、LED がオン/オフする際の容量変化によって、増加または減少することがあります。この変化がセンサー動作に影響を与えないようにするため、グラウンドとLED パターンとの間に100nF のコンデンサを接続す必要があります。

センサーPCB 上に配置されたその他の部品がフローティング・パターン、すなわち常にVCCまたはGND へ駆動されないパターンを持つことがあります。これらのフローティング・パターンがセンサーへ悪影響を与えないようにするため、グラウンドとすべてのフローティング・パターンとの間に100nF のコンデンサを接続する必要があります。

EMI とESD に敏感なデザイン

EMI が問題となるデザインでは、センサーとAD7147 またはAD7148 との間のパターン長を最短にします。パターンがEMI信号の波長より短い場合、ノイズはセンサーに混入しません。

保護デバイスを使って、センサーへのEMI/ESD の影響を防止することができます。たとえば、Semtech 社のRClamp3304P または同等のデバイスを使って、AD7147 のCIN 入力を保護することができます。このデバイスは、非常に小さい接合容量(<1 pF)を持ち、センサー容量の負荷にならないために推奨されます。このデバイスは、ACSHIELDピンの保護にも使うことができます。

VCC 電源とVDRIVE 電源にOn Semiconductor® 社のESD9X3.3ST5G-D ダイオードまたは同等品を接続して、ESD パルス時の大きな過渡スパイクから電源を保護することが必要です。CIN ピンでの使用に対しては、このダイオードの接合容量が大き過ぎるため、電源ピンに対してのみ使用します。

ESD 保護デバイスの使用の他に、センサーとAD7147 またはAD7148 へのセンサー配線の周囲に幅2 mm のACSHIELD プレーンを配置することが推奨されます。この領域からボード外縁へ広がるグラウンド・プレーンを設ける必要があります。これにより、ESD パルスにとって、ACSHIELD パターンまたはCIN パターンへ向かう代わりに、グラウンドへ向かう最小抵抗パスが用意されます。センサーPCB 上のグラウンド・プレーンとACSHIELDプレーンの配置を示すレイアウト例を図 1~図 4 に示します。

センサーとは別のPCB へのAD7147 またはAD7148 の実装

AD7147 またはAD7148 は、センサーと同じPCB へ実装する必要はありません。たとえば、AD7147 またはAD7148 をマザー・ボードに実装し、デバイスのユーザー入力表面の近くにセンサーを実装することができます。

IC からセンサーへのパターンは、ノイズ干渉を防止するために注意深くシールドする必要があります。AD7147 またはAD7148からのACSHIELD 出力は、図 5 に示すようにセンサー・パターンを囲むように配線する必要があります。

図 5.CIN 接続のシールドに使用するACSHIELD
図 5.CIN 接続のシールドに使用するACSHIELD

一般的なレイアウトの失敗

信号交差によるノイズ


デジタル・インターフェースまたはその他のスイッチング信号からのノイズが、センサーに混入することがあります。このノイズは、正しくないレイアウトによって混入します。シリアル・インターフェースまたはその他のデジタル・スイッチング信号を、センサーまたはセンサー・パターンに並行して配線しないようにします。

図 6.正しくないレイアウトの例
図 6.正しくないレイアウトの例

 

図 7.正しくないレイアウトで発生するセンサー・ノイズ
図 7.正しくないレイアウトで発生するセンサー・ノイズ

センサーの実装

センサーPCB と最終製品のカバーとの間に間隙が生じないようにすることが推奨されます。間隙は、電界強度を弱めるため、センサー電極からカバー誘電材料を経てタッチ面までの容量性結合能力を大幅に弱めます。このためセンサー応答が弱くなり、センサー動作の信頼性と堅牢性が損なわれます。

センサーPCB は最終製品のカバー材料の裏面に取り付ける必要があります。3M™社のAdhesive Transfer Tape 467MP (両面テープ)の使用が推奨されます。センサーは、最大5 mm 厚までのカバー層の下で正しく動作します。推奨厚は1 mm~2 mm です。金属で覆うと、センサーは動作しません。

金属シャーシを使用するデバイスの場合、センサー領域周辺での金属までの距離条件は0.2 mm 以上です。センサーPCB から5 cm 以内のすべての金属は、接地する必要があります。センサーの近くにある接地しない金属は、動作に悪影響を与えます。AD7147 またはAD7148 が実装されているPCB の裏面にも配置禁止領域を設ける必要があります。配置禁止領域は、IC に圧力を加えないため、PCB のパターンが短絡しないように、十分確保する必要があります。

著者

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Susan Pratt