
アプリケーション・ノート使用上の注意
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AN-893: AD7656/AD7657/AD7658のシリアルおよびデイジーチェーン・インターフェース動作モードの設定
はじめに
AD7656/AD7657/AD7658は、パラレル・インターフェース・モード、シリアル・インターフェース・モード、デイジーチェーン・インターフェース・モードの3つのインターフェース・モードのいずれかで動作するように設定できます。パラレル動作モードは、AD7656/AD7657/AD7658のデータシートで詳細に説明しています。本アプリケーション・ノートでは、データシートに記載されている情報に加えて、AD7656をシリアルおよびデイジーチェーン・インターフェース・モードに設定する方法を詳述します。
AD7656/AD7657/AD7658のシリアル・インターフェース・モードの設定
AD7656のSER/PAR/SELピンを使用して、パラレル・インターフェース・モードまたはシリアル・インターフェース・モードのいずれかを選択します。シリアル・インターフェース・モードを選択するときは、このピンをロジック・ハイレベルに設定します。シリアル・インターフェース・モードのときは、AD7656をハードウェア選択動作モードに設定し、H/S SELをロジック・ローレベルに設定してください。シリアル・インターフェース・モードでは、AD7656をソフトウェア動作モードに設定することはできません。
シリアル・インターフェース・モードの動作時は、アプリケーションで必要とされるシリアルDOUTラインの数を選択するようにAD7656を設定します。SEL A、SEL B、SEL Cを使用して、それぞれDOUT A、DOUT B、DOUT Cの各データ出力ラインをイネーブルします。シリアル・インターフェースに必要なDOUTラインが1本のみの場合は、DOUT Aを使用してください。DOUT Aをイネーブルするときは、SEL Aピンをロジック・ハイレベルに設定し、SEL BとSEL Cの各ピンをロジック・ローレベルに設定します。2本のデータ出力ラインを使用するようにシリアル・インターフェースを設定するときは、DOUT AとDOUT Bを使用します。DOUT AとDOUT Bをイネーブルするときは、SEL AとSEL Bの各ピンをロジック・ハイレベルに設定し、SEL Cをロジック・ローレベルに設定します。3本すべてのデータ出力ラインを使用するようにシリアル・インターフェースを設定するときは、DOUT A、DOUT B、DOUT Cをイネーブルしてください。3本すべてのDOUTラインをイネーブルするときは、SEL A、SEL B、SEL Cの各ラインをロジック・ハイレベルに設定します(図2、図3、図4を参照)。
1本のみ、または2本のDOUTラインをシリアル・インターフェースに使用する場合は、使用しないDOUTラインを無接続の状態にしてください。使用しないこれらのDOUTラインについては、それぞれのSELピンをロジック・ローレベルに設定する必要があります。
ハードウェア・プログラマブル・ピンの設定
AD7656をシリアル・モードおよびハードウェア選択モードで動作させる場合は、AD7656に必要な動作モードに応じて、いくつかのピンを設定する必要があります。これらのピンとしては、REFEN/DIS、DCIN C、DCIN B、DCIN A、DCEN、DB11、DB12、DB13、DB15、REFBUFEN/DIS、RESET、RANGE、STBY、W/Bなどがあります。
シリアル・インターフェース・モードの場合は、W/B、RD、DB11、DB12、DB13、DB15をロジック・ローレベルに設定する必要があります。
AD7656のパラレル・インターフェース・モードの動作の場合と同様に、REFEN/DIS、REFBUFEN/DIS、RESET、RANGE、STBYの各ピンは、アプリケーションの要求に応じて設定する必要があります。
AD7656をシリアル・インターフェース・モードで動作させ、デイジーチェーン・モードで動作させない場合は、DCEN、DCIN A、DCIN B、DCIN Cの各ピンをDGNDに接続してください。
AD7656からのデータ読出し
AD7656をシリアル・インターフェース・モードで動作させる場合、変換コントロールはAD7656のデータシートでパラレル・インターフェース・モードについて説明している方法と同じです。CONVSTピンを使用して、AD7656のチャンネル・ペアの変換を開始します。BUSY信号がローレベルに戻って変換の完了を示したら、AD7656からデータを読出すことができます。
シリアル・インターフェース・モードで、CS、SCLK、DOUTの各信号を使用して、AD7656の変換データにアクセスします。図5に、データ出力DOUTラインを3本すべて使用した代表的な読出しシーケンスを示します。
3本のDOUTラインを使用して6チャンネルの変換データを読み出す場合は、表1で説明するようにAD7656のチャンネル・データがDOUTラインに出力されます。
表1
DOUT LINE | DOUT A | DOUT B | DOUT C |
Channel Data | V1, V2 | V3, V4 | V5, V6 |
2本のDOUTラインを使用して6チャンネルの変換データを読み出す場合は、表2で説明するように変換データがDOUTラインに出力されます。
表2
DOUT LINE | DOUT A | DOUT B |
Channel Data | V1, V2, V5 | V3, V4, V6 |
1本のDOUTラインを使用して6チャンネルの変換データを読み出す場合は、変換データが昇順でDOUT Aに出力されます。
AD7656の4チャンネル(V1、V2、V3、V4)の変換時には、1本または2本のDOUTラインを使用して変換データを読み出すことができます。1本のDOUTライン(DOUT A)を使用する場合は、データが昇順で出力されます。2本のDOUTライン(DOUT AとDOUT B)を使用する場合は、データは表3に示すように出力されます。
表3
DOUT LINE | DOUT A | DOUT B |
Channel Data | V1, V2 | V3, V4 |
シリアル・インターフェース・モードでのCONVSTおよびBUSY信号のタイミングは、AD7656のデータシートでパラレル・インターフェース・モードについて説明している内容と同じです。すでに説明したように、シリアル・インターフェース・モードではRD信号をロジック・ローレベルに設定する必要があります。
BUSY信号がローレベルに戻って変換の完了が表示されたら、AD7656のデータシートのタイミング仕様でt2として表記されているように、CS信号をただちにローレベルにすることができます。CSの立下がりエッジを使用して、最初の変換結果のMSBを出力して、バスのスリーステート状態を終了させます(図5を参照)。アクセス時間t17は、CSの立下がりエッジの後でMSBが有効になるまでの時間を示します。その後に続くデータ・ビットは、SCLKの立上がりエッジでAD7656から出力されます。再び説明しますが、t17はSCLKの立上がりエッジの後でデータが有効になるまでの所要時間です。SCLKの立ち下がりエッジで、データがプロセッサに入力される必要があります。SCLKの立ち上がりエッジで、データをプロセッサに入力する必要がある場合は、CS信号がローレベルになった後でMSBが入力されるようにしてください。AD7656の各チャンネルから変換結果をすべて読み出すためには、16個のSCLKが必要です。
6チャンネルすべての変換が実行中の場合、6チャンネルのデータを読み出すために必要なSCLKの最小パルス数は、使用するDOUTラインの本数に応じて異なります。DOUTラインが3本の場合は32個、DOUTラインが2本の場合は48個、DOUTラインが1本の場合は96個のSCLKがそれぞれ必要になります。
CS信号をローレベルに設定して、最初の変換のMSBを出力するときに、CS信号を読出しシーケンスの残りの時間中ローレベルのままに維持することができます。ただし、必要に応じて個々のチャンネルの読出しが完了した後で次の読出しが開始されるまでの間に、CS信号をローレベルにすることも可能です(図6を参照)。
シリアル読出しの終了時にCS信号はハイレベルに戻ります。tQUIET 時間が経過するまで待ってから次の変換を開始する必要があります。
デイジーチェーン・モード
シリアル・インターフェース・モードを使用する場合、DCENピンを使用して複数のAD7656をデイジーチェーン・モードに設定し、複数のAD7656をデイジーチェーン構成でカスケード接続することもできます。デイジーチェーン・モードには、1つのシリアル・インターフェースを使用するだけで複数のデバイスをコントロールできる利点があります。シリアル・インターフェース・モードの場合と同様にデイジーチェーン・モードでは、使用するDOUTラインの本数を選択できます。
複数のデバイスをデイジーチェーン・モードで動作するように設定する場合(DCENはロジック・ハイレベル)、SEL A、SEL B、SEL Cの各ピンを使用してDOUTラインの本数を選択できます。これらのSELピンは、各AD7656デバイスのDCINピンの本数を決定するときにも使用します。
デイジーチェーンの上流のAD7656デバイスの対応するDOUTピンにDCINピンを接続してください。図7から図9に、各種のデイジーチェーン構成を示します。デバイス2と表記されているデバイス、すなわちチェーンで最も上流のデバイスはデイジーチェーン動作を行うように設定しないでください(DCENをロジック・ローレベルに設定します)。デバイス1は、デイジーチェーン動作を行うように設定します(DCENをロジック・ハイレベルに設定します)。AD7656をデイジーチェーン・モードに設定する場合は、12番、13番、14番の各ピンをDCINピンとして設定します。シリアル・インターフェース・モードの場合と同様に、SEL A、SEL B、SEL Cの各ピンを設定して、必要なDOUTインターフェース・ライン数を選択する必要があります。
図10に、複数のAD7656を図8に示すように設定したときのシリアル読出し動作を示します。チェーン内の2個のAD7656に1つのCONVST信号が送られます。BUSY信号がローレベルに戻って変換の完了が表示されたら、CS信号をローレベルに設定して、シリアル転送を開始できます。このシリアル転送期間中にCS信号をローレベルのままに維持するか、またはチャンネル読出しが終了するたびに(16個のSCLKサイクルごとに)CS信号をローレベルにすることができます。最初の48個のSCLKサイクル中に、デバイス1はDOUT A(チャンネル1、2、5)およびDOUT B(チャンネル3、4、6)を使用してその変換データをデジタル・ホストに転送し、デバイス2はDOUT A(チャンネル1、2、5)およびDOUT B(チャンネル3、4、6)に出力されるその変換データをデバイス1に入力します。このデータは、デバイス1のDCIN AとDCIN Bにそれぞれ入力されます。シリアル転送の2番目の48SCLKサイクル時に、デバイス1はデバイス2からすでに入力されたデータをデジタル・ホストに入力し、デバイス2はデバイス1に対して0を出力します。
3本または1本のDOUTラインを使用してAD7656をデイジーチェーン・モードに設定する場合も、上記と同様な原理が適用されます。
デイジーチェーン・モードでシリアル転送を行うために必要なSCLKパルス数は、チェーン内のデバイスの個数およびインターフェースに使用されるDOUTライン数に応じて異なります。