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AN-2533: 超低消費電力、18 ビット、差動PulSAR ADC ドライバ
回路の機能とその利点
図1 に示す回路は、低消費電力完全差動アンプADA4940-1 が駆動する超低消費電力、18 ビット、1MSPS のA/D コンバータ(ADC)AD7982 を使用しています。低ノイズ、高精度、5.0Vの電圧リファレンスADR435 を用いて、ADC に必要な5V を供給します。図1 に示すIC はすべて、3mm × 3mm のLFCSP または3mm × 5mmのMSOP のいずれかの小型パッケージで入手可能なため、基板のコスト削減とスペース縮小に寄与します。この回路におけるADA4940-1 の消費電力は、一般的に6.25mW です。18 ビット、1MSPS のADCであるAD7982 の消費電力は、1MSPSでわずか7mWです。この消費電力はスループットにも比例します。ADR435 の消費電力はわずか4.7mW であるため、システムの全消費電力は18mW未満になります。
図1. 高性能18 ビット差動ADC ドライバ(概略図:接続の一部およびデカップリングは非表示)
回路の説明
18 ビット、1MSPS のPulSAR® ADC であるAD7982 などの最新の高分解能SAR ADC は、最適な性能を発揮するために差動ドライバが必要になります。このようなアプリケーションでは、ADC ドライバは、差動信号またはシングルエンド信号のいずれかを取り込み、ADC の入力を適正なレベルで駆動するために必要なレベル・シフトを実行します。
図1 に、18 ビットの差動入力逐次比較PulSAR ADC であるAD7982 をレベル・シフトし駆動する差動アンプADA4940-1 を示します。4 つの抵抗を用いると、ADA4940-1 は、1 のゲインで信号をバッファするか、またはより大きなダイナミック・レンジを得るために信号を増幅することができます。交流および直流性能は、18 ビット、1MSPS のPulSAR® ADC であるAD7982や、サンプリング・レートが最大2MSPS のファミリの他の16ビット版および18 ビット版の性能と互換性があります。この回路は、シングルエンド入力信号を受け入れて、同じ完全差動出力信号を生成することもできます。
この回路におけるADA4940-1 の消費電力は、一般的に6.25mWです。18 ビット、1MSPS のADCであるAD7982 の消費電力は、1MSPS でわずか7mW です。この消費電力はスループットにも比例します。ADR435 の消費電力はわずか4.7mW であるため、システムの全消費電力は18mW以下になります。
AD7982 は、2.5V のVDD 単電源で動作し、低消費電力、高速、18 ビットのサンプリングADCと汎用シリアル・インターフェース・ポートを搭載しています。リファレンス電圧(REF)は、高精度、低ドロップアウト(0.3V)のバンドギャップ・リファレンスであるADR435 から外部印加され、電源電圧とは無関係に設定できます。
ADA4940-1 は、5V の単電源で動作し、出力に十分なヘッドルームを提供します。これらの出力は、2.5Vのコモンモードで0Vから5V までスイングし、ADC へのフルスケール入力に対応しています。ADA4940-1 は、入力と出力に直流結合され、その出力がAD7982 の入力を駆動します。また、必要に応じて、シングルエンドから差動への変換も可能です。
ゲインは、帰還抵抗(R2 = R4)とゲイン抵抗(R1 = R3)の比で設定します。R1 = R2 = R3 = R4 = 1kΩ の場合、シングルエンド入力インピーダンスは約1.33kΩ です。更に、この回路を用いて、シングルエンド入力または差動入力のいずれかを差動出力に変換できます。必要に応じて、入力と並列の終端抵抗を使用できます。入力がシングルエンド入力または差動入力のいずれであっても、アンプの入力インピーダンスを、チュートリアルMT-076 および差動アンプ設計ツールDiffAmpCalc™で示されるように計算できます。
ADC 入力におけるノイズを制限し、SAR ADC の容量性DAC 入力から生じるキックバックの影響を低減するために、単極で2.7MHz のRC(22Ω、2.7nF)ノイズ・フィルタをオペアンプ出力とADC 入力の間に配置します。
この回路のテストでは、信号発生器が10V p-p の差動出力を供給しました。VOCM 入力は、ノイズ低減のためにバイパスされ、5Vの電圧リファレンスで出力ダイナミック・レンジを最大にするよう、1%の抵抗を用いて外部から設定します。2.5V の出力コモンモード電圧を用いると、各ADA4940-1 出力は、0V と5V との間で、逆位相でスイングし、1 のゲインおよび10V p-p 差動信号をADC 入力に提供します。
FFT の性能を図3 に示します。その概要は以下のとおりです。
- ダイナミック・レンジ = 97.33dB
- SNR = 96.67dBFS
- SINAD = 96.52dBFS
- THD = −111.03dBFS
図2 に、AD7982 の代表的なINL およびDNL 性能を示します。
図2. 20kHz 信号で、サンプリング周波数が1MSPS の場合のINL およびDNL プロット(最小/最大INL = +1.6LSB/−1.1LSB、DNL = ±0.5LSB))
図3. 1kHz 信号で、フルスケールより0.5dB 低く、サンプリング周波数が1MSPS の場合のFFT プロット