変革するアナログ・デバイセズのパワーマネジメント
変革するアナログ・デバイセズのパワーマネジメント
道場俊平 著
電波新聞ハイテクノロジー 2009年6月19日 掲載
- 低電圧時代のLDO
- 小型電流モードスイッチングレギュレータ
- 1.8V動作 昇圧スイッチングレギュレータ ADP1612
- 自動輝度調整機能付きLEDドライバ ADP8860
- 小型GPIOエクスパンダ ADP5588
1V前後で動作するプロセッサが増える中、電源ICの動作電圧範囲は2.5V程度までしか動作せず、プロセッサの電源としてLDOを使うとドロップ電圧が大きくなるため、効率が悪く、放熱特性に悩まされることになる。ADIはそこにバイアス電源不要で1.6Vまで動作するLDO「ADP175x」と「ADP174x」シリーズをリリースした。図1のようにDC/DCコンバータを使う必要がないため設計の時間とコストの改善を実現する。ADP175x、ADP174xシリーズは出力電流0.8A、1.2A、2Aのそれぞれがピンコンパチのため、急な設計変更による電流増加にも2Aまで対応できる。逆に負荷電流が減った場合、小さいものにレイアウト変更なしで置き換えることができ、コストダウンが容易に達成できる。出力電圧固定と出力電圧抵抗設定のラインナップ、調整可能なソフトスタート、パワーグッドの機能付きと機能も豊富だ。効率も1.8Vから1.2Vを作ることを想定すると、66%のためDC/DCコンバータに比較すると多少悪いが、スイッチングレギュレータと違いリップルノイズがないので要求精度への合わせこみも楽である。
図1. 低入力電圧LDO
500mA程度の負荷の要求に対して、ADIでは6MHz電圧モード「ADP2121」、3MHzコンスタントオンタイム電流モード 「ADP2102」、3MHz PWM/PFM自動切り替え電流モード「ADP2108」の3つのソリューションを提供している。どの製品も小型化を助ける高速スイッチング周波数の製品で、6MHzのADP2121は周辺部品を含めて5mm2に収めることが可能である。小型・高効率・省スペースが求められる電池駆動のアプリケーションを対象としているため、低負荷時自動パワーセーブ機能が付いている。これにより、バッテリーの長寿命化を実現する。ADP2121はモードピンにより、低負荷時も強制PWM動作が可能である。ADP2108, ADP2121はWLCSPにより超小型化が可能であり、ADP2102は3x3mmのLFCSPで提供している。図2に示すADP2108はオーソドックスな仕様のためTSOT-23のパッケージオプションを追加し、幅広いマーケットで利用可能だ。固定出力により、周辺部品はインダクタと入出力コンデンサだけで動作し、部品点数削減にも効果を発揮する。
図 2. シンプル、小型、高効率「ADP2108」の回路例
3.1.8V動作 昇圧スイッチングレギュレータ ADP1612
低入力電圧1.8Vまで動作する「ADP1612」は、乾電池2直から3.3Vや5Vを作る昇圧DC/DCコンバータとして使用可能である。 ADP1612はピンのハイ・ローでスイッチング周波数650kHzか1.3MHzを選択可能で、効率重視かスペース重視かを選択することができる。電流モードにより優れた過渡応答特性を持ち、ソフトスタート機能により突入電流を防止する。図3の内部ブロックからUVLO、過温度保護、過電流保護など保護機能が充実していることがわかる。
図3. 昇圧スイッチング・レギュレータ 「ADP1612」の内部ブロック図
スイッチング周波数1MHzで駆動する「ADP8860」は、1×、1.5×、2×で動作するチャージポンプ方式の並列LEDドライバである。そのためPCB面積をインダクタ分省スペース化し、インダクタから発するEMIノイズも気にする必要がない。チャージポンプの倍圧が自動切り替えのためDC/DCを使わずに電池の長寿命化が可能だ。従来LEDを並列にするとその精度により明るさのバラつきが懸念されたが、LEDのカソード部分にはそれぞれ定電流回路がつながり、高精度で電流を引き込むため視覚的にばらつきが判断できないレベルに改善された。ADP8860は最大7つの白色LEDをドライブ可能で6個は30mAまで、1個は最大60mAまで電流を引くことができる。フォトダイオードをつけることで、外部光量に合わせて自動調光機能を持ち、夜、室内、晴れの日と環境に応じて見やすい輝度にバックライトコントロールし、I2Cによる電流調整も可能だ。図4はメイン液晶4灯, サブ液晶2灯、キーパッドLED10灯の例である。様々な要求に対応できるフレキシブルな製品だ。パッケージは4×4mmのLFCSPと2×2.4mmのWLCSPがあり、小型化への要求も実装しやすさの要求にも応えられるようになっている。
図4. 自動調光機能付きチャージポンプLEDドライバ「ADP8860」
携帯市場でスマートフォンの人気が出始め、キーパッドが増えたことにより、GPIOが不足するという問題が増えた。ADP5588は4×4mmの小型 LFCSPパッケージで最大10×8のキーマトリックスを組むことが可能だ。これによりCPUの負荷の低減と容量の増加をサポートする。ボタンのオン( プレス)とオフ(リリース)の割り込みでトリガするかしないかを選択できるキーロックオプションを兼ね備えている。GPIOとして使うC8, C9は図5の 点線のようにフォトダイオードを繋ぎ、照度センサーとしても利用することができるため白色LEDバックライトの調光にも応用できる。スマートフォン以 外のアプリケーションでもGPIOの不足を解決する。
図5. 小型GPIOエクスパンダ「ADP5588」