モーション・コントロール・アプリケーション向けチップ間通信の概要

集積回路(IC)は有機体のように機能します。これらのICはすべてのモジュールとドライブの基礎を形成し、個々のチップが原子と分子の役割を果たします。システム全体を活性化させるのは、チップ間の通信です。

原子のように単一の目的を果たすチップもあれば、分子のように、複数の機能が1つのパッケージに組み込まれているチップもあります。実用的な回路を作成するには、これらすべてのコンポーネントがチップ間で簡単に通信できる必要があります。ADI Trinamic™製品には、この目的をサポートするペリフェラルとソフトウェアが豊富にあります。ここでは、IC通信を可能にする主要なインターフェースをいくつか紹介します。

シリアル・ペリフェラル・インターフェース(SPI)

SPI(シリアル・ペリフェラル・インターフェース)は、同期シリアル通信用のインターフェース・バスです。セレクト・ラインを利用して目的のペリフェラルにデータを送信するほか、モーション・コマンドと診断の両方に対応する単一の双方向インターフェースであるため、必要なリード・パターンの数が最小限に抑えられます。一般にマイクロコントローラと小型ペリフェラル間の短距離通信に使用されるSPIは、センサー、ステッピング・モータ、コンバータ、フラッシュ・メモリ、リアルタイム・クロックなどのコンポーネントで広く用いられています。このシンプルなオンボード・インターフェースは、CPUやマイクロコントローラからの送信時には最大数十Mbpsの帯域幅に達するため、高帯域幅のペリフェラルを制御できます。

データ・ストリーム構造がSPIプロトコルによって定義されていないため、データの構成は設計エンジニアが行います。様々なペリフェラルとの高速かつシンプルな通信を可能にするSPIインターフェース・バスは、汎用性とわかりやすさを兼ね備えています。ADI TrinamicのSPIチップセットは、マイクロステッピング・テーブルを完全に制御することで、マイクロステップ分解能をオンザフライでシームレスに変更できます。そのためモーション・コントローラでマイクロステッピング・テーブルを、最適化されたモータ要件に適合させることができます。

Serial Peripheral Interface

ユニバーサル非同期レシーバー/トランスミッタ(UART)

UART(ユニバーサル非同期レシーバー/トランスミッタ)は、通常は集積回路の一部として、設定可能なデータ形式と伝送速度による非同期シリアル通信に使用されます。シリアル通信インターフェースは、パラレル・インターフェースとシリアル・インターフェース間を中継するインターフェースとして機能します。

UARTはデータの各バイトを個々のビットに分割して順番に送信します。次に、レシーバーがそれらのビットを取得し、シフト・レジスタを使用して完全なバイトにコンパイルします。この方法を使用すると、双方向通信のインターフェースに必要なシリアル・ワイヤは1本だけになるため、コスト効率の高いデバイス間インターフェースになります。

Single-Wire-UART-V2

ほとんどのUART構造には、データが正しく処理されるように、データをより小さな要素に分割すると共に元の状態に組み立てるための入出力シフト・レジスタ、送受信制御、読出しおよび書込み用のコントロール・ロジック、通常はビット周期中央でのサンプリングを可能にするクロック・ジェネレータが含まれています。

Inter-Integrated Circuit(I²C)

I2C(Inter-Integrated Circuit)は、8ビット通信と2つのみのIOを使用する同期シリアル・バスです。パケット交換方式のシングルエンド・バスの通信に必要なワイヤは2本のみです。システムの要件に応じ、マルチプレクサを使用して更に2本のワイヤに分割できます。

このバス構造では、複数のコントローラ・ノードと複数のサブノードを使用できます。つまりI²Cは、SPIの複数サブノードという利点とUARTの双方向配線という利点を組み合わせて、単一デバイス内でシリアル・データおよびシリアル・クロック信号の短距離転送を行います。入力バッファ付きのオープン・ドレインがあるため単一のデータ・ワイヤを介した双方向通信が可能であり、特定のサブノードにアドレス指定されたデータ・フレームを送信できます。

Inter-Integrated Circuit (I²C)

I2Cは、組み込みシステムで広く使用されています。多くの場合はMCUがメイン・ノード、EEPROMやセンサー、その他のペリフェラルがサブノードとして機能し、2本のピンのみを使用してボード内短距離通信を行います。メイン・ノードはビットのサンプリングを同期するために使用されるクロック信号を制御し、システムは特定のACKビットまたはNACKビットを使用して各フレームが正常に転送されたことを確認します。

パルス幅変調(PWM)

パルス幅変調(PWM)は、デジタル入力信号を可変アナログ信号に変換するロジックレベルのインターフェースです。この変換は、各信号をチョッピングして個別のパーツに分けることによって行われるため、信号ごとの平均電力が低減されます。信号がLowである時間に比べてHighである時間が長いほど、出力アナログ信号電圧は高くなります。逆にLowである時間が長ければ、出力アナログ信号電圧は低くなります。モータはその慣性により、離散スイッチングの悪影響に容易に耐えられることから、モータを駆動する主な方法の1つとしてPWMが使用されています。ただし、モータを制御する場合は、負荷への影響を最小限に抑えられるため滑らかな波形により駆動性能が向上する、高速PWMスイッチングが依然として好まれます。PWMで最も好まれる特徴の1つが効率の高さで、最小の消費電力で負荷への電源供給を制御するのに最適です。更に、デジタル制御と簡単に組み合わせて、PWMデューティサイクルを設定できます。

リアルタイム・モニタリング・インターフェース(RTMI)

リアルタイム・モニタリング・インターフェース(RTMI)でADI Trinamic USB-2-RTMIアダプタを使用することにより、エンジニアはセットアップがどのように動作するかをリアルタイムに確認できます。RTMIをサポートするすべてのADI Trinamic製品とピン配置が同じである、小型10ピン・コネクタを備えています。このアダプタでRTMI信号をUSB信号に変換し、TMCL-IDEを使用してそのUSB信号を簡単に表示できます。

RTMIは、通常のSPIインターフェースに対するパラレル・インターフェースとなります。つまり通常のセットアップで行うようにMCU経由でコントローラICにコマンドを送信できると同時に、RTMIとコントローラICを接続してレジスタを確認し、必要に応じて調整できます。このインターフェースにより、TMCL-IDEを使用してコンピュータ上に結果をグラフとして視覚化しながら、チップを微調整することができます。

RTMIは、セットアップのモニタリングという利点があるだけでなく、PWM周波数などの高データレートやリアルタイムの測定にも対応できるため、高度に動的な駆動を簡単に調整できます。

RTMI Adapter

ステップ/方向(STEP/DIR)

ステップおよび方向(STEP/DIR)インターフェースは、様々なモータの制御を簡素化でき、産業用アプリケーションに広く用いられています。つまりステップおよび方向ドライバとモーション・コントローラで互換性のあるソリューションを実現できます。特にマイクロステップ分解能とステップ周波数が高い場合、STEP/DIRアーキテクチャにはSPIまたはPWMインターフェースに比べてわずかな帯域幅しか必要ないため、このインターフェースはステッピング・モータに最も多く使用されています。

もっと高度な通信インターフェースは他にもありますが、STEP/DIRは、できる限り少ない制御ラインを使用して長距離をカバーすると同時に、シンプルで堅牢なモータ・コントロール・インターフェースを提供する必要がある、産業用モーション・コントロールの分野で現在も広く用いられています。

STEP/DIRインターフェースは、モーション・コントロール用の2つのデジタル入力を使用することで機能します。1つは速度または位置(STEP)用、もう1つはモータの回転方向(DIR)用です。ステッピング・モータの制御方法としては、比較的簡単な方法です。一例としては、電力段までの診断のセットアップおよびフィードバック・チャンネルにSPIを使用し、ステッピング・モータとの通信はSTEP/DIRを介して行う、モーション・コントローラが挙げられます。

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Step/Direction (STEP/DIR)