FAQ/よくある質問:MEMS慣性センサー
FAQ/よくある質問:MEMS慣性センサー
Q |
- 慣性センサーとは何ですか?
- 加速度センサーとジャイロスコープとは何ですか?これらの違いは何でしょうか?
- 加速度センサーはどこで使用されていますか?
- ジャイロスコープはどこで使用されていますか?
- 慣性センサーの主な誤差源は何ですか?
- 慣性センサーの分解能の限界は何ですか?
- それ以上の分解能が必要な場合は、どうすればいいですか?
A |
厳密にいえば、慣性センサーとは慣性を利用して測定を行うデバイスのことです。しかし、一般的に「慣性センサー」というとき、加速度センサーかジャイロスコープのことを意味しています。
加速度センサーとジャイロスコープとは何ですか?これらの違いは何でしょうか?
加速度センサーとは、加速度または並進運動を測定するセンサーです。ジャイロスコープとは角速度センサーであり、回転角速度を計測します。角加速度センサー(角回転の変化速度を測定するデバイス)もありますが、めったに使用されません。一般に、加速度センサーは線形加速度を測定するデバイスと考えられています。
加速度センサーはどこで使用されていますか?
加速度センサーには多くの用途があります。以下はそのいくつかの例です。
- 加速度センサーは振動の測定に利用できます。故障した機械には特徴的な振動パターンが現れます。モータのベアリングはその好例です。正常なときの動きはスムーズで静かですが、消耗してくると次第に動きが粗くなります。加速度センサーは、このような振動の変化を測定して、故障を未然に防ぐことができます。
- ショック(衝撃)は非周期的な振動とみなすことができます。加速度センサーはショックの測定にも使用できます。たとえば、コンテナが輸送中に手荒な扱いを受けなかったかを測定することができます。一般的な方法としては、輸送中に加速度センサーの測定値を記録し、荷物が到着した後にデータをアップロードして解析します。
- 加速度センサーは速度の変化を測定できます。自動車のエアバッグがその一例です。エアバッグは速度が急激に大きく低下するのを測定して、展開の判定を下します。(速度の急激な低下は、衝突を示す唯一の信頼できる指標です。路面の凹凸でも衝撃が発生しますが、それが原因でエアバッグが作動することはありません)。
- 多くの加速度センサーは、重力などの静的な加速度を測定できます(アナログ・デバイセズの製品はすべてこれに該当します)。重力ベクトルはつねに地球の中心に向かっています。重力ベクトルが加速度センサーの各軸にどのように分解されるかを測定する事で、加速度センサーの傾きを知ることができます。
ジャイロスコープはどこで使用されていますか?
ジャイロスコープは、物体の回転速度や回転量を知りたいときに使用します。回転速度を求める方法は多数ありますが(光学的方法や磁気的方法など)、ジャイロスコープの特長は、外付け部品を使わずに測定できることです。以下はそのいくつかの例です。
- 自動車の電子安定制御システムでは、ジャイロによって車の回転速度を測定し、車の速度情報、ハンドル回転量と比較します。値が違っていると、差動ブレーキが起動し、自動車の姿勢を制御します。
- デジタル・カメラの手ぶれ補正を実現するために、カメラの回転運動をジャイロで測定します。ぶれの無い画像になるように、レンズ素子を動かして画像の位置を調整します。この方法により、たとえ撮影の瞬間にカメラが動いても画像にぶれが生じません。
- ナビゲーション・システムでは、ジャイロの角速度出力を積分して方位角を求めます。得られた方位角は、ナビのユーザが曲がったか、またどれだけ曲がったかを判定します。この情報と位置情報で、ユーザがいる位置を割り出すことができます。
慣性センサーの主な誤差源は何ですか?
大部分の慣性センサーにはいくつかの誤差源があります。誤差源には簡単に処理できるものとそうでないものがあります。以下はそのいくつかの例です。
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ヌル・バイアス誤差(加速度センサーの場合はゼロGバイアス誤差)
ヌル・バイアス誤差とは、慣性センサーにまったく入力がないとき(加速度センサーの場合はゼロG、ジャイロの場合は無回転)のゼロからの偏差のことです。一般に、あらゆるセンサーには少なくとも2種類のヌル・バイアス誤差があります。初期のヌル・バイアス誤差と温度に起因するヌル・バイアス誤差です。初期バイアス誤差はごく簡単に補正できます。最初に刺激のないセンサー出力を測定し、理想値からその値を引きます。その値を保存しておき、後続のすべての測定値に加えます。温度に起因するヌル・バイアス誤差の処理はそれほど簡単にいきません。一般に補正係数はセンサーによって異なるため、デバイスごとに温度補正を行う必要があります。データシートには、この両方のヌル・バイアス誤差の仕様が記載されています。
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スケール・ファクタ誤差
スケール・ファクタ誤差はセンサーの理想感度からの偏差です。温度変化に伴う誤差以外に、初期誤差もあります。ヌル・バイアス誤差と同様、両方ともキャリブレーションで補正できます。スケール・ファクタのキャリブレーションは、ユーザが既知の刺激をセンサーに与える必要があるため、それほど簡単ではありません。アナログ・デバイセズの慣性センサーは一般に初期スケール・ファクタ誤差がほとんどなく、温度に起因するスケール・ファクタ誤差はさらに少なくなっています。
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ノイズ
慣性センサーはすべてノイズの影響を受けます。一般にノイズは帯域幅に比例するため、使用帯域幅に基づいてノイズの大きさを計算する必要があります。アナログ・デバイセズの慣性センサーのノイズはガウス・ノイズ(ノイズ・エネルギーが全周波数で同一)です。単極出力フィルタを使用した場合、センサーのRMSノイズを式で表すと、RMSノイズ=ノイズ密度×√(帯域幅×π/2)となります。ノイズ密度は、センサーのデータシートに記載されています。
- 非直線性、レシオメトリック性など、ほかにも誤差源がいくつかありますが、支配的な誤差要因ではない為、FAQでは割愛します。
一般に、慣性センサーの分解能の限界となるのはノイズです。上述したように、RMSノイズを計算してみてください。通常、RMSノイズのレベルを下回る信号を分解することはできません。
必ず低ノイズのセンサーを選択してください(アナログ・デバイセズには大部分のアプリケーションに対応できるように、さまざまなノイズ密度のモデルをいくつか用意しています)。それでも駄目な場合は、帯域幅とノイズ密度という2つの方法を試すことができます。前述したように、RMSノイズはノイズ密度と帯域幅によって決まります。ユーザはセンサーのノイズ密度を変更できないため、そのアプリケーションで使用する帯域幅を可能な限り小さくしてみてください。さらに調整が必要な場合は、複数のセンサーからの信号を平均化します。アナログ・デバイセズの慣性センサーのノイズはランダム(ガウス)ノイズです。したがって、各センサーのノイズに相関性がないため、N個のセンサーを平均すれば√nのノイズ改善が得られます。