AD7685 - FAQ

信号帯域とドライバアンプの選びかた

Q:  低電力のデバイスということでAD7685を選んだわけですが、そのドライバアンプはADC自体よりも電力が多くなってしまいます。一般的にそういうものなのでしょうか。AD7685のドライバアンプとしてAD8617のような低電力タイプのものを使用することは出来ないのでしょうか。低電力といった観点でドライバアンプを選択するとしたら何が最も良いでしょうか? なお、使用する信号帯域は20kHz以下です。

A:  AD7685の入力は、データシートの15ページにありますように、コンデンサ、抵抗などのネットワークに入力端子が接続されています。そのためスイッチングの際のトランジェント電流を充放電するため、比較的強力なドライブアンプを入力に接続する必要があります。データシートの回路例ではAD8618を使用しています。このアンプに変えて、低消費電力のアンプを使用する事は可能ですが、以下の点に注意してください。

  1. 低消費電力アンプは比較的出力ノイズの大きなものが大半です。このノイズレベルがAD7685の変換精度の与える影響を十分検討してください。システムでどれぐらいの変換精度を必要としているかで、使用可能かどうか判断します。
  2. システムに要求される変換精度で、歪みに関する仕様があれば、注意してください。アンプのTHD性能が、ADCのTHD性能に比べて劣れば、ADC本来の性能が出ません。
  3. 帯域20kHz以下とのことですが、その帯域に制限するフィルタにどのようなものを使用するかで、ADC回路のSN比が変わってきます。アンプの出力ノイズが大きい場合でも、このフィルタにより低減でき、使える仕様に入る場合もあります。
  4. ドライバアンプの駆動能力が、十分ADCの入力をセトリングさせることができるかどうか、十分評価してください。

ADCのドライバアンプの選択は、単純に一つの道筋があるわけではありません。 使用するアプリケーションで何を必要としているか(DC精度、AC精度、消費電力、サイズ、変化スピード、etc)で、その選択基準が変わってきます。その中でもどのスペックが優先されるかで、やはり選択基準が変わります。優先されるスペックにあわせ、それ以上の性能を持つアンプを選ぶことが原則です。

コンバータのアナログ部とデジタル部の分離

Q:  回路のアナログ部とデジタル部分離したいと考えています。 アナログ用とデジタル用で全く別の電源を用意し、コンバータのREF+、REF–、 AINはアナログ電源に、VDD/GND/通信インターフェースはデジタル電源に、というような配線をしても問題ないでしょうか。

A:  VDDはアナログ電源とすることをお勧めいたします。またREF+/REF–/AINにはGND – 0.3V ≤ (REF+, REF–, AIN) ≤ VDD+0.3Vの制限がありますので、別電源とした場合、この制限を越える状態が発生しないように注意してください。

CSモードとチェーンモードのメリット・デメリット

Q:  AD7685を3個使用して同時サンプルしたいのですが、CSモードとチェーンモードでどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
AD7685日本語データシート17ページに、CSモードは同時サンプリングに有用という内容が記載されていますが、チェーンモードでは同時サンプル出来ないのでしょうか。またCSモード4線式BUSYインジケータありのモードで、AD7685を3個接続することは出来ないのでしょうか。

A:  CSモードとチェーンモードの違いは、データの読み出し方法に違いだけで、変換方法の違いではありません。どちらのやり方でも、AD変換はCNV信号ピンのL→Hの遷移で起動されますので、このタイミングが3個のADCで同時であれば、変換は同時に行なわれます。 CSモードもチェーンモードもデータは全て1本のデータ線でシリアルでCPU側に読み込まれます。CSモードの場合は、どのデバイスの結果を読み出すかは、CS信号で指定しますのその順番はランダムに指定可能で、必要のないデバイスの結果は読み出さなくでもOKです。 ただしこのモードではCPU側よりデバイスの数だけCS信号が必要になります。チェーンモードは、デバイスのI/Oが1本に結ばれ、データは先頭のデバイスの結果から接続された順番に従ってシーケンシャルにデータ列となって出てきます。従って、任意のデバイスのデータのみを指定して読み出すことはできません。列の最後のデバイスのみのデータが欲しい場合でも、接続されたすべてのデバイスのデータを読み込まなければなりません。どちらの方法を選ぶかは、アプリケーションによります。 どちらの方法でもデバイスを3個以上接続することは可能です。CSモードの場合は、その数だけCS信号が必要です。

変換とデータ出力が同時の場合、出力されるデータは?

Q:  たとえばAD7898をMODE-1で使用した場合、外部クロックで変換とデータ出力が同時に行われますが、このとき出力するデータは今変換しているデータか、それとも前回変換したデータなのでしょうか。

A:   Mode1では確かに変換とデ-タの読み出しを同時に行えますが、ADCの基本としては、変換が完全に終了するまでは、正しいデ-タが、内部のレジスタには収まりません。 よってAD7898のMode0のような、変換、終了、デ-タ読み出しといった一連の動作には変わりありません。
さて、Mode1では、変換とデ-ダの読み出しを同時に行うことで、より高速に動作されることができます。 しかしながら、基本動作はMode0の考え方と同じですから、変換したデ-タは変換終了後ADC内部の出力レジスタに格納されます。 その次のCSが立下り(次の変換動作)になったとき、内部に格納された変換デ-タが出力されます。

A/Dコンバータの変換速度と入力周波数の関係は?

Q:  ± A/Dコンバータのスペックを見ると入力帯域と変換速度が異なりますが、これらはどのような関係なのですか?

A:   A/Dコンバータの入力周波数帯域は、アンチエリアスフィルタを付けないでAD変換を行ったときにコンバータがサンプリングできるアナログ信号の帯域です。従ってサンプリング周波数の1/2以上の帯域を持つコンバータは、フィルタが無ければこの帯域にある信号を1/2帯域内に折り返してきます。逆に高い周波数に信号を低いサンプリング周波数で変換し、信号の折り返しイメージをデジタルフィルタで取り出す目的で、このようなA/Dコンバータを使う場合があります。これをアンダーサンプリングとよびます。

完全差動型のADCをシングルエンドのアナログ入力信号で駆動したい

Q:  完全差動型のADCでは、データシートによると、シングルエンドのアナログ入力信号の場合は、差動変換ドライバの使用が推奨されています。シングルエンド信号を直接A/Dコンバータ入力端子(IN+)に接続した場合、ADCコードはどのようになりますか?(2の補数で出力されないのでしょうか?)

A:   完全差動型の入力構成で設計されているADC、たとえばAD7690では、本来はシングルエンド入力信号に対しての使用を推奨する製品ではありません。AD7690のデータシートにもありますようにコモンモード入力レンジはVref/2までしかなく、仮に"-入力"をGNDに接続して+側にシングルで入力した場合、5Vリファレンス使用時に、入力信号電圧2.5Vまでしか精度が保証されません。基本的にADC内部で信号がシングルか差動かを判別するロジカルな機能はなく、出力データフォーマットは一定です。

未使用ロジック入力は?

Q:   /CONVSTやALERT、/BUSY信号を使用しない場合の処理を教えてください。

A:   未使用ロジック入力はノイズの影響でエッジが発生することを避けるためPull upなどでLOGIC high固定してください。

電源と基準電源を共用した時のデカップリング方法。

Q:   データシートに、Vdd電源をREFから供給する回路が掲載されています。 例えば、Vio=+3.3V、Vdd=+5V(=REF)とする場合、両ピンの間にある1uFのコンデンサは、どちらのピンに付けるのでしょうか。 また、その場合、容量は1uFのままで良いのでしょうか。 なお、付けない方のピンには、0.1uF程度のパスコンを付けたほうが良いのでしょうか。

A:   VDDをREF電圧から供給する回路は英文データシート(Rev.B)のFigure 33をご参照ください。 この回路では、VDD、VIOが同じ電圧となっていますがVIOを分離して3.3Vに接続し100nFのコンデンサーでデカップリングを行ってください。

AD7685の抵抗

Q:   AD7685のデータシートの図33に、VddをREFから供給する回路が掲載されていますが、REFピンとVddピンの間の10Ωの抵抗は何の目的で挿入されているのでしょうか。 抵抗無しでも問題ないのでしょうか。

A:   VDDをREF電源から供給している回路でREFとVDD間に使用している10Ωの抵抗は、デジタル回路の動作に伴うノイズがREF電圧に与える影響を低減するためのものです。この抵抗を省くと特性が低下する可能性があります。