デジタル・ポテンショメータ FAQS
デジタル・ポテンショメータ FAQ
寄稿編集者:Roger Allan
Q. デジタル・ポテンショメータとは何ですか。
A. 通常のポテンショメータ、つまり「ポット」とは、電子回路の中を流れる電流量を変更または制御するためのアナログ素子です。これは、所望の可変抵抗の値を選択するためのワイパーを備えた機械式のデバイスです。デジタル・ポテンショメータには、揮発性と不揮発性の2種類があります。揮発性デバイスは、抵抗または抵抗アレイから構成されます。また、スイッチ、ロジック・ゲート、マルチプレクサ、データ・コンバータなどの電子回路要素も備えています。不揮発性デバイスはこれに加えて、EEPROMやワンタイム・プログラマブル(ヒューズ・リンク)メモリ形式のメモリを内蔵しています。デジタル・ポテンショメータを使用すれば、システム許容誤差のキャリブレーションや、システム・パラメータの動的制御が可能になります。不揮発性メモリ・デバイスは、オフからオンへのパワー・サイクルの後もワイパー設定値を保持します。さらに、ヒューズ・リンク・デバイスがワンタイム・プログラム・トリマー機能を提供します。
Q. アナログ・ポテンショメータと比較した場合の、デジタル・ポテンショメータの最大の長所は何でしょうか。
A. デジタル・ポテンショメータは、堅牢性に優れているため、機械式ポテンショメータの代替品としてきわめて経済的です。また、設定機能、分解能、ノイズ・レベルにおいても非常に優れています。経時的な安定性が高く、抵抗値のドリフトが最小限であり、信頼性が高く、リモート・コントロールが可能です。その他の利点としては、物理的サイズが小さく、抵抗の温度係数が低く、抵抗レンジ・オプションが豊富で、多数のパッケージから選択できることなどが挙げられます。これはデジタル素子であるため、設計者は、揮発性または不揮発性のメモリ構成においても使用することができます。
Q. デジタル・ポテンショメータにはどのようなアプリケーションがありますか。
A. デジタル・ポテンショメータは、可変ローパス・フィルタ、プログラマブル・ゲイン・アンプ、プログラマブルな発振器、電圧/電流コンバータ、プログラマブルな立上がり/立下がり時間波形コントローラとして使用できます。さらには、セット・ポイント・スレッショールドの高精度キャリブレーション、センサ・トリミング、LCDバイアス・トリミング、オーディオ減衰、調整可能電源、モーター制御過電流トリップ設定、オフセット・トリミングにも使用できます(図1)。
A. はい。ポテンショメータの基本構成には、3端子型(図2a)と2端子型(図2b)の2種類があります。正しいポテンショメータ構成で使用する場合、3端子型では通常ワイパーを高インピーダンス・ノードに接続することで、設計者はワイパー上の負荷を最大限に制御できます。これによって、ワイパーを流れる電流を低く維持できます。一方、デジタル・ポテンショメータを2端子構成で接続すると、ワイパーに大きな負荷電流を流す必要があります。これはとりわけ、ワイパーがポテンショメータのハイサイドに最も近く、接地されているローサイドに接続されている場合に当てはまります。このような状況では、ポテンショメータに印加される電圧とワイパーの抵抗値に応じて、VHとVWを流れる電流が最大電流定格を上回らないように留意して設計する必要があります。
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- デジタル・ポテンショメータとは何ですか。
- アナログ・ポテンショメータと比較した場合の、デジタル・ポテンショメータの最大の長所は何でしょうか。
- デジタル・ポテンショメータにはどのようなアプリケーションがありますか。
- デジタル・ポテンショメータを用いた設計において、ポテンショメータの基本構成は重要でしょうか。
- デジタル・ポテンショメータは、アナログ・ポテンショメータに対する1対1の代替品であると言えるでしょうか。そうでないとすれば、どんな制約がありますか。
- デジタル・ポテンショメータを用いた設計で、動作電圧範囲はどれくらい重要なのでしょうか。
- 不揮発性デジタル・ポテンショメータの電源を切断してからターンオンすれば、リフレッシュすることができますか。
- デジタル・ポテンショメータには、一般的にどんな不具合動作がありますか。
デジタル・ポテンショメータとは
Q. デジタル・ポテンショメータとは何ですか。
A. 通常のポテンショメータ、つまり「ポット」とは、電子回路の中を流れる電流量を変更または制御するためのアナログ素子です。これは、所望の可変抵抗の値を選択するためのワイパーを備えた機械式のデバイスです。デジタル・ポテンショメータには、揮発性と不揮発性の2種類があります。揮発性デバイスは、抵抗または抵抗アレイから構成されます。また、スイッチ、ロジック・ゲート、マルチプレクサ、データ・コンバータなどの電子回路要素も備えています。不揮発性デバイスはこれに加えて、EEPROMやワンタイム・プログラマブル(ヒューズ・リンク)メモリ形式のメモリを内蔵しています。デジタル・ポテンショメータを使用すれば、システム許容誤差のキャリブレーションや、システム・パラメータの動的制御が可能になります。不揮発性メモリ・デバイスは、オフからオンへのパワー・サイクルの後もワイパー設定値を保持します。さらに、ヒューズ・リンク・デバイスがワンタイム・プログラム・トリマー機能を提供します。
Q. アナログ・ポテンショメータと比較した場合の、デジタル・ポテンショメータの最大の長所は何でしょうか。
A. デジタル・ポテンショメータは、堅牢性に優れているため、機械式ポテンショメータの代替品としてきわめて経済的です。また、設定機能、分解能、ノイズ・レベルにおいても非常に優れています。経時的な安定性が高く、抵抗値のドリフトが最小限であり、信頼性が高く、リモート・コントロールが可能です。その他の利点としては、物理的サイズが小さく、抵抗の温度係数が低く、抵抗レンジ・オプションが豊富で、多数のパッケージから選択できることなどが挙げられます。これはデジタル素子であるため、設計者は、揮発性または不揮発性のメモリ構成においても使用することができます。
Q. デジタル・ポテンショメータにはどのようなアプリケーションがありますか。
A. デジタル・ポテンショメータは、可変ローパス・フィルタ、プログラマブル・ゲイン・アンプ、プログラマブルな発振器、電圧/電流コンバータ、プログラマブルな立上がり/立下がり時間波形コントローラとして使用できます。さらには、セット・ポイント・スレッショールドの高精度キャリブレーション、センサ・トリミング、LCDバイアス・トリミング、オーディオ減衰、調整可能電源、モーター制御過電流トリップ設定、オフセット・トリミングにも使用できます(図1)。
図1.
デジタル・ポテンショメータは、高精度スレッショールドの設定(a)、セット・ポイントまたはスレッショールドのキャリブレーション(b)、
電圧リファレンスのトリミング(c)、プログラマブルな反転ゲイン・アンプ(d)など、さまざまなアプリケーションで使用できます。
(a) RWB = RAB(D/63)
VTRIP = VDD(R2 + RWB/R1 + RAB + R2)
(b) VTRIP = VDD(R2 + RWB/R1 + RAB + R2)
RNOMINAL = RAB RWB = RAB(D/63)
D = digital potentiometer wiper setting (0-63)
(d) VOUT = –VIN (RB/RA)
RA = RAB(256-D)/256, RB = RABD/256
RAB = total resistance of potentiometer
D = wiper setting
D=デジタル・ポテンショメータのワイパー設定(0~63)
RAB=ポテンショメータの合計抵抗
D=ワイパー設定
Q. デジタル・ポテンショメータを用いた設計において、ポテンショメータの基本構成は重要でしょうか。
A. はい。ポテンショメータの基本構成には、3端子型(図2a)と2端子型(図2b)の2種類があります。正しいポテンショメータ構成で使用する場合、3端子型では通常ワイパーを高インピーダンス・ノードに接続することで、設計者はワイパー上の負荷を最大限に制御できます。これによって、ワイパーを流れる電流を低く維持できます。一方、デジタル・ポテンショメータを2端子構成で接続すると、ワイパーに大きな負荷電流を流す必要があります。これはとりわけ、ワイパーがポテンショメータのハイサイドに最も近く、接地されているローサイドに接続されている場合に当てはまります。このような状況では、ポテンショメータに印加される電圧とワイパーの抵抗値に応じて、VHとVWを流れる電流が最大電流定格を上回らないように留意して設計する必要があります。
図2.
ポテンショメータは、3端子(a)または2端子(b)で設定できます。
Q. デジタル・ポテンショメータは、アナログ・ポテンショメータに対する1対1の代替品であると言えるでしょうか。そうでないとすれば、どんな制約がありますか。
A. いいえ、デジタル・ポテンショメータは、アナログ・ポテンショメータに対する1対1の代替品ではなく、いくつかの制約があります。設計者は、電圧レベルと電流レベルが、データシートに指定された最大定格を下回ることを確認する必要があります。通常、デジタル・ポテンショメータは、一方(図2a)がVDD電源ラインに接続され、他方(図2b)がVSSライン(グラウンド接続可能)に接続され、その中間でワイパー側の出力(W)を使用できます。AまたはBの大きい方の電圧は、VSSまたはグラウンドの値を上回る必要があります。5Vを超える動作用に定格された一部のモデルを除いて、ワイパーとVDDおよびVSSライン間の電圧と、VDDとVSSの間の電圧が、5Vを超えてはなりません。
特定の抵抗設定における最大電流は、3つの境界値によって制限されます。つまり、最大の定格動作電圧、消費電力定格(低い抵抗値での1つのファクターになります)、および内部スイッチの最大許容電流です。最小のワイパー抵抗となるゼロスケールでは、スイッチが許容可能な断続電流の最大値は20mAです。図3は、コード値の関数として、ワイパー端子とグラウンドの間の最大電流の代表的な値を示したグラフです。
図3.
このグラフは、コード値の関数として、ワイパー端子とグラウンドの間の代表的な最大電流を示します。
理論的なIWB_MAX(mA)
コード(10進)
Q. デジタル・ポテンショメータを用いた設計で、動作電圧範囲はどれくらい重要なのでしょうか。
A. 動作電圧範囲はきわめて重要です。デジタル・ポテンショメータは、通常のアナログ・ポテンショメータが使用される電圧定格と整合性のある定格を持つ必要があります。大部分のデジタル・ポテンショメータは、5V動作に制限されています。しかし、±5V、±15V、12V、30Vの動作が可能なデジタル・ポテンショメータもあります。
Q. 不揮発性デジタル・ポテンショメータの電源を切断してからターンオンすれば、リフレッシュすることができますか。
A. いいえ。その場合には、EEPROMではなく、レジスタ・ロジックだけがリフレッシュされます。EEPROMセルに新しい電荷を書き込むには、その定格保持期間(通常は10年以上)の前にデータをリロードする必要があります。
Q. デジタル・ポテンショメータには、一般的にどんな不具合動作がありますか。
A. これはデジタル素子であるため、VDD、VSS、ポテンショメータ端子、グラウンドに関する規定のパワーアップ・シーケンスに従わないときは、デジタル・ポテンショメータの端子AとBにラッチアップ現象が発生することがあります。5V定格のデジタル・ポテンショメータが5Vを超える電圧(ポテンショメータの端子AとBの間、またはワイパー(W)とAまたはBの間)にさらされた場合には、デバイスが故障することもあります。まずVDDを印加してから、次にVSSを印加することを推奨します(グラウンド基準)。デジタル・ポテンショメータの端子(AとB)とワイパー端子(W)との印加順序は重要ではありませんが、これらは最後に電源を入れる必要があります。
これはElectric Design Magazineに掲載された記事を翻訳したものです。